研究課題/領域番号 |
20H03643
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
副島 英伸 佐賀大学, 医学部, 教授 (30304885)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | NSD1 / ソトス症候群 / エピゲノム / 精神発達遅滞 / コンディショナルノックアウトマウス / DNAメチル化 / ヒストン修飾 / トランスクリプトーム |
研究開始時の研究の概要 |
ソトス症候群における精神発達遅滞は、脳組織のマクロ形態異常に伴う神経回路の形成異常が原因と考えられるが、その分子病態はまったく解明されていない。本研究では、独自に作製した脳特異的Nsd1コンディショナルノックアウトマウスおよびNsd1 C末端3xTy1ノックインマウスを用いて、神経細胞のエピゲノム解析と遺伝子発現解析を行い、原因遺伝子NSD1の神経細胞における標的遺伝子を同定する。さらに、クロマチンループ構造解析、三次元組織解析を加えることで、分子病態モデルを作成し、神経回路形成異常の分子機構を解明する。
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研究実績の概要 |
抗NeuN抗体を用いたセルソーティングにより、脳特異的Nsd1コンディショナルノックアウトマウス(Nsd1-cKOマウス)の海馬から成熟神経細胞核を分取した。これらの細胞核を用いて、Cut&Tag法にてゲノム網羅的なヒストン修飾(H3K27Ac、H3K27me3、H3K36me2、H3K36me3)を解析した。加えて、昨年度までに行った全ゲノムDNAメチル化解析(EM-seq)とトランスクリプトーム解析(RNA-seq)のデータも一部統合して解析した。Controlと比べてNsd1-cKOマウスでは、遺伝子間領域でH3K36me2の低下、H3K27me3の上昇、DNAメチル化の減少を認めた。Nsd1-cKOマウスで発現が減少した遺伝子のうちトップ5を解析したところ、プロモーター領域のH3K27Acの減少を認めた。このうち2つの遺伝子では、エンハンサーと思われる領域のH3K27Acの減少とH3K27me3の上昇、およびH3K36me2の減少を認めた。一方、Nsd1-cKOマウスで発現が上昇したトップ5の遺伝子はプロモーター領域のDNAメチル化の減少を認めた。以上より、Nsd1-cKOによりエピゲノム状態が変化し、ひいてはトランスクリプトームが変化することが明らかとなった。特に、遺伝子発現低下は、プロモーター領域やエンハンサー領域のH3K27Acの減少に依存し、遺伝子発現上昇はプロモーター領域のDNAメチル化の減少に依存することが示唆された。また、遺伝子発現低下トップ5遺伝子の中には、神経細胞の生存、増殖、分化、シナプス形成、樹状突起促進に関わるとされる遺伝子が含まれており、ソトス症候群の表現型と関連する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成熟神経細胞核を用いて、Cut&Tag法にてゲノム網羅的なヒストン修飾(H3K27Ac、H3K27me3、H3K36me2、H3K36me3)を解析した。加えて、昨年度までに行った全ゲノムDNAメチル化解析(EM-seq)とトランスクリプトーム解析(RNA-seq)のデータも一部統合して解析しすることで、エピゲノム状態の変化を把握することができた。また、予備的な解析ではあるが、遺伝子発現の減少と上昇では、影響するエピゲノム変化が異なることが示唆された。さらに、ソトス症候群の表現型と関連する可能性のある遺伝子が、エピゲノム変化により発現変化を生じていることも同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたエピゲノム解析情報(DNAメチル化、ヒストン修飾(H3K27Ac、H3K27me3、H3K36me2、H3K36me3)、トランスクリプトーム)を統合して詳細に解析することにより、NSD1の標的ゲノム領域 or 標的遺伝子を絞り込む。また、透明化技術を用いた脳深部バイオイメージング解析を共同研究で進めており、Nsd1-cKOによる細胞レベルの形態学的変化を解析する。以上より、ソトス症候群における精神発達遅滞の分子病態を明らかにする。
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