研究課題
基盤研究(B)
エイズ根絶の障壁はHIV-1潜伏感染であり、T細胞と並ぶHIV-1主要標的「単球・マクロファージ」の解析が重要となってきた。実際、申請者は単球中のfibrocytesと言うサブセットに高頻度に潜伏感染することを発見し、静止期CD4+ T細胞よりも強く潜伏感染する複数の症例を認めた。本研究では症例を重ね、fibrocytesが主要潜伏感染細胞であることを明確にする。定性的解析から定量的解析へレベルを高める。感染サルモデルでも検証し、潜伏感染の解除法も確立する。議論が多いマクロファージでの潜伏感染についても、最近、純化した「ヒト組織常在マクロファージ」を用いた感染実験で明らかにする。
HIV-1の単球への潜伏感染が問題となっているが、本研究ではCD34陽性の単球(fibrocytes)は通常の単球よりHIV-1に高感受性である事を明らかにした。まず未治療の感染者fibrocytes中のプロウイルスDNA頻度は高く、治療後に血中ウイルスが検出限界以下の感染者fibrocytesでも検出された。Fibrocytesは末梢血に加えリンパ節にも存在し、どちらもHIV-1受容体、そして細胞がリンパ節に出入りする際に重要な分子CCR7とS1PR1を高発現した。以上から、fibrocytesがHIV-1高感受性と末梢-組織循環能によりリンパ節で残存HIV-1に感染する可能性を見出した。
HIV-の克服には潜伏感染細胞の排除が重要である。静止期CD4+ T細胞以外にも近年、単球への潜伏感染も分かってきた。本研究では単球中ではfibrocytesに潜伏感染しやすいことを明らかにした。さらに、長期に抗レトロウイルス療法を行い、血中ウイルス量が検出限界以下になった感染者において、なぜ末梢fibrocytesにHIV-1ウイルスゲノムが存在し得るのかは不明であったが、この根源的な疑問にも一定の答えを出せた。並行して進めた組織マクロファージ解析も合わせ、ミエロイド系の細胞に関する一連の発見はHIV-1潜伏感染細胞の完全排除に向けて、有用かつ重要な情報と期待される。
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