研究課題/領域番号 |
20H03872
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分57040:口腔再生医学および歯科医用工学関連
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (20350829)
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研究分担者 |
岩本 莉奈 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 助教 (20907216)
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
堀部 寛治 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (70733509)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | Wnt / 骨再生制御因子 / ゲノム編集スクリーニング / Ryk / 活性型ビタミンD / ビタミンD |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、骨再生制御因子の同定のために、独自にビタミンD標的遺伝子ゲノム編集ライブラリーを作製する。このビタミンD標的遺伝子ライブラリーまたはゲノムワイド遺伝子ライブラリーと、応募者が開発したWnt応答性細胞死回避/誘導レポーターシステムを用いて、①遺伝子発現オンシステムであるCrispr-Aスクリーニング、②遺伝子発現オフシステムであるCrispr-KOスクリーニングを行う。①と②の統合的解析により骨再生制御因子を同定し、骨再生治療における薬剤標的(druggable) 分子を決定する。
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研究実績の概要 |
in vivoマウス実験によりビタミンDシグナルの過剰(Hypervitaminosis D)に伴う高カルシウム血症に起因する骨折治癒(骨再生)不全および軟組織の石灰化亢進を2021年度に見出した。2022年度は、慢性腎不全(CKD)モデルマウスを用いて、低カルシウム血症と活性型ビタミンD低下症に伴う軟組織石灰化のメカニズムを解析した。2021年度の研究成果と2022年度の研究成果により、軟組織の石灰化の進行に関し、活性化ビタミンDと骨芽細胞内のビタミンD受容体(VDR)は真逆の方向に働き、Hypervitaminosis Dにおいては骨再生を抑制する一方軟組織石灰化を促進し、CKDにおいては骨再生を促進するとともに軟組織石灰化進行を抑制する方向に働くことを明らかにした。そこで、in vivo骨芽細胞が活性型ビタミンD応答性に放出する骨再生抑制因子および動脈石灰化促進因子の同定のための実験を行った。その結果、Hypervitaminosis DとWntシグナル伝達破綻の関連が示唆された。そこで、 Wntシグナルの正の調節因子(骨再生促進因子)および負の調節因子を探索した。具体的には、遺伝子発現オンシステムCrispr-A と遺伝子発現オフシステムCrispr-KO により発現上昇または抑制した各遺伝子機能を、代表者が開発したWntシグナル活性依存性細胞死回避レポーターシステムを用いて評価した。Hypervitaminosis Dによる骨形成低下と軟組織石灰化には、TGFbetaシグナル分子の関与が示唆され、CKDによる骨形成低下と軟組織石灰化には、Wntシグナル分子と糖転移酵素の関与を示唆するデータを得た。以上、2022年度は、ビタミンDの代謝異常を研究することで、骨再生に寄与する因子を見出すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビタミンDシグナルの異常活性化(Hypervitaminosis D)と異常低下(CKD)に起因する骨折治癒(骨再生)不全および軟組織石灰化における骨芽細胞内のVDRの役割を明らかにした。双方の病態はビタミンDの代謝に関しては正反対であるにもかかわらず、双方の病態において骨吸収の異常亢進および骨形成低下、血清FGF23値の上昇を見出し、これらの作用において骨芽細胞のVDRが大きく関与していることを明らかにした。一方、副甲状腺ホルモン(PTH)に関しては、Hypervitaminosis Dモデルでは低値、CKDモデルでは高値であった。FGF23は骨芽細胞における活性型ビタミンD-VDRの標的遺伝子である。Hypervitaminosis DとCKDでは、ビタミンD過剰と不足の真逆な状態であることから、CKDは翻訳レベルでのFGF23調節機構があることが示唆された。実際にCKDにおいて低ビタミンDレベルを反映して骨におけるFGF23の発現低下を認めた。また、既知のFGF23翻訳後修飾機構では説明できないことも判明した。また、Hypervitaminosis DとCKDの双方でWnt阻害因子の発現がmRNAレベルでは低下しているにも関わらず、血清レベルでは上昇していることも発見できた。
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今後の研究の推進方策 |
Hypervitaminosis DとCKDにおいて活性型ビタミンDやPTHの分泌制御などは真逆であるにも関わらず、軟組織石灰化、骨吸収亢進、骨折治癒(骨再生)不全、血清FGF23上昇、Wntシグナル低下という共通現象が認められる。おそらく共通のメカニズムが存在すると予想する。そこで、Hypervitaminosis Dと種々の腎臓病モデルを作製し、これらの原因が異なる病態モデルを用いて上記の共通病態における骨芽細胞内のVDRの役割を明らかにする。特に動脈石灰化や脂質および糖代謝、骨形成・骨吸収の調節における骨芽細胞内のVDRの役割に着目して、骨芽細胞特異的VDR欠損マウスを用いて研究を行う。具体的には、骨芽細胞が存在する骨のみならず、異常が生じた遠隔臓器のmRNA発現プロファイルをRNAシーケンシングにより作成する。また、Wntシグナル受容体14種類の中で、成体における骨形成と脂質代謝の双方において非常に重要な分子を見出した。本研究室で作製した当該分子遺伝子欠損マウスは、骨形成の顕著な低下を示すとともにメタボリック症候群を発症した。骨芽細胞特異的当該遺伝子欠損マウスと対照マウスの骨組織で発現差異のあった分泌性因子を見出している。FGF23の新規翻訳後制御候補因子については、骨芽細胞系細胞に過剰発現させて、実際にFGF23を修飾しているか調べる予定である。
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