研究課題/領域番号 |
20H03976
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58060:臨床看護学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 (2022-2023) 東京大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
村山 陵子 藤田医科大学, 社会実装看護創成研究センター, 教授 (10279854)
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研究分担者 |
真田 弘美 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (50143920)
土井 麻里 (阿部麻里) 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (50802386)
小見山 智恵子 東京大学, 医学部附属病院, 看護部長 (60581634)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 末梢静脈カテーテル留置 / 輸液看護 / 輸液療法 / 看護技術 |
研究開始時の研究の概要 |
末梢静脈に留置したカテーテルが腫脹や発赤、疼痛などの症状や徴候を伴い、治療が完遂する前に抜去を余儀なくされる「点滴トラブル」の発生率を限りなく0%に近づけたい。点滴トラブルの原因・要因解明の研究を続け、新たなカテーテルの必要性が示唆され、産学連携を活かし開発を行ってきた。その新カテーテルを、看護師も使用できる医療機器として臨床現場に還元する。最終的には、輸液療法における点滴トラブル発生を予防する末梢静脈カテーテル留置管理基準: 日本版の開発と普及を目指す。新カテーテル評価研究、新カテーテルを含むカテーテル留置アルゴリズムの確立、日本版カテーテル留置管理基準の開発と普及を行う。
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研究実績の概要 |
研究1の臨床研究で用いる留置カテーテルは上腕の静脈に留置可能な長さ88mmであり、国内においては未承認医療機器のため、臨床研究法に基づく医師主導型研究として取り組んだ。今年度は非盲検ランダム化比較対照試験を実施し調査を終了した。血液・腫瘍内科における高刺激薬剤投与患者に対し、新カテーテル(A群)、従来カテーテル(B群)をランダムに割り付け、留置されたカテーテルの予後を追跡(A群22本、B群25本)した結果、点滴トラブル発症はA群0件に対し、B群8件(32%)であり有意差(p=.004)が認められた。エコーによる抜去時観察で血管内血栓形成はA群45.5%、B群88.0%、重度の皮下浮腫形成がA群0%、B群32.0%、穿刺時の疼痛(visual analogue scale)は、平均±標準偏差はA群18.2±16.5、B群40.0±18.2でありA群のほうが有意に疼痛の訴えが低かった。1回目穿刺成功率はA群79%、B群52%であった。今後さらに分析を進める。 研究2では、昨年度の研究で従来カテーテルの留置時にアルゴリズムを臨床に適用したところ点滴トラブルの予防効果が実証されたことより、そのアルゴリズムを含んだエコーを用いる末梢静脈カテーテル留置技術ベストプラクティスを看護理工学会より発刊するに至った。またAI技術による画像判読サポートのアプリを搭載した機器を使用し、有用性評価の実験研究を実施した結果、エコーの経験があるグループ(5名)において、穿刺点を探して決める所要時間が、サポート機能の使用なしの場合と比較して有意に短かかったことより、穿刺血管選定時間の短縮につながる可能性が確認された。さらに穿刺時にエコーを用いるには穿刺部直近にプローブをあてる必要があり、清潔野が保持できない問題があった。そこで企業と連携しエコー透過性に優れたドレッシングフィルムを開発、現在特許出願中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、非盲検ランダム化比較対照試験を実施した入院病棟は、COVID-19パンデミックの影響により、病床数が制限され、入院患者数が予測を下回った。そのため研究対象患者数も予想より大幅に減少した。途中、研究実施期間の延長の変更申請をし、年度内にデータ収集を終えることはできたが、上腕に留置するカテーテルの有効性が明らかであるという結果が出せていた場合は、発刊したベストプラクティスには上腕の静脈に留置する技術についても含めた内容にする予定であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究2のアルゴリズムをさらに有用なものとして普及を図っていく、そして研究3「末梢静脈カテーテル留置管理基準: 日本版の開発と普及」として、穿刺時のみならず輸液療法中における点滴トラブル発生を予防、または早期発見するための、管理基準日本版を開発し、普及することを目指す。 具体的には、研究1の成果として、上腕の静脈に留置したカテーテルから血管内に高刺激薬剤を投与することは、前腕からの投与よりも点滴トラブル発生が少ないことが確認された。まずこの成果を論文として公表していくとともに、研究2のアルゴリズムを上腕へのカテーテル留置技術にも応用できるよう、必要であればアルゴリズムの更新、改訂を行う。エコーを用いるカテーテル留置技術を普及していくためには、看護師がエコーを活用できることが前提となる。エコー活用のために要求される技術は画像の撮像技術と判読技術であるが、判読技術がよりスムーズにできることを目指し、AI技術による画像判読サポートのアプリもぜひ取り入れていく。そうすることでエコーを活用できる看護師を増やすことができ、またさらに看護基礎教育の段階から導入することで臨床への技術実装がよりスピーディーに進められると考えている。技術の普及、定着を促せるよう、各種講習会、学術集会などの機会を利用する。最適なデバイスの選択、エコーによるアセスメント技術の向上を促し、輸液療法中における点滴トラブル発生を予防、または早期発見するための画像判読技術を推進する。最終的には、それらの技術普及による効果を確認しながら、並行して末梢静脈カテーテル留置管理基準を完成させていくことを目標としている。
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