研究課題
基盤研究(B)
近年、先進国を中心に摂食障害が増加しており世界的に関心を集めている。特に、死の転機をとることも珍しくない極端なやせを追求するAN患者に対する新しい治療法の開発が切に望まれているが、その成果は十分ではない。本研究は、“腸内細菌-脳-腸相関”の機能異常が関与している疾患としてANに注目し、その病態解明と新しい栄養療法の開発を目的とするものである。
本年度は、フラクトオリゴ糖の一種であるケストース(KES)を用いた動物実験(研究1)と神経性やせ症(以下ANと略)の腸内細菌叢が体重増加に伴いどのように変化するか(研究2)を実施した。研究1では、BALB/cマウスにKESを添加した食餌またはKESを添加しない食餌を3世代にわたって摂取させ、10週齢時に行動実験を行った。行動解析後に、脳の組織および糞便のサンプルを採取し、脳内のモノアミンの測定および腸内細菌叢の解析を行った。その結果、KESを添加した食餌を3世代にわたって摂取したマウス(KES群)は、KESを添加していない食餌を摂取したマウス(CON群)と比較して、活動量が増加した。さらに、KES群では線条体のドーパミン(DA)が増加しており、活動量と相関していた。腸内細菌叢に関しては、CON群に比べてKES群でα多様性が有意に低かった。3次元主座標分析では、各世代においてKES群とCON群との間に有意差が認められた。以上の結果は、長期にわたりKESの摂取は、脳内報酬系を活性化し、宿主の行動変容をもたらす可能性を示している。研究2では、高感度で正確な生菌定量が可能である16Sまたは23S rRNA標的定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法(YIF-SCAN)を用いて、入院中のAN患者の腸内細菌叢を複数回解析し、体重増加との関連を検討した。治療中の体重増加にもかかわらず、AN患者の腸内細菌叢の腸内細菌叢の異常(ディスバイオーシス)は持続した。また入院治療中のBifidobacterium数の増加は、1年後の体重増加と有意に相関していた。以上の結果は、AN患者におけるディスバイオーシスは体重増加のみでは容易に回復しない可能性があり、腸内細菌叢を標的とした治療的介入の必要性が示された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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