研究課題/領域番号 |
20H04204
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
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研究機関 | 東京理科大学 (2023) 東京大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
早川 智彦 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 准教授 (10747843)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | 動的蓄光マーカー / 無添加蓄光現象 / トラッキング / バイオイメージング / 光軸制御 / 高速ビジョン / 蓄光現象 / ガルバノミラー / サーモカメラ / 紫外光レーザー / 可視光レーザー / 燐光 |
研究開始時の研究の概要 |
従来のマーカーは外的な特徴量や事前の色素塗布を前提としており,トラッキング対象や条件が制約されていた.そこで,本研究では対象に特徴点が全く存在しない状況でも動的にマーカーを発現させる方法として,無添加で紙や布,構造物等への紫外線照射時に生じる蓄光現象を利用し,高精度かつ高速な動的蓄光マーカーを実現する.そのため,まず様々な素材に対する蓄光特性をモデリングすることでマーカー特性を最適化し,その後,特徴量を持たない対象に動的蓄光マーカーを発現させ,トラッキングを実施する.本研究は,様々な分野で応用される基盤的な光学トラッキング技術と位置付けられ,コスト削減による省エネルギー社会への貢献を目指す.
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研究実績の概要 |
無添加素材に生じる燐光について,化学分野での状況について調査を行ったところ,現象としては散発的に報告されている現象だということが明らかになった.一方で,本研究が目指すトラッキング応用については工学的に実装された事例が見当たらないことから,新規性が担保されていることも確認することができた.その上で,トラッキング応用の応用範囲を広げるため,観察に利用する高速ビジョンに燐光のスペクトル分布に最適化したフィルタを装着し,精度向上を目指し,各素材に紫外線照射を行った後の燐光のスペクトルを計測することで,ピーク波長を明らかにした.ただし,シャープなピークではないことがわかり,光量不足に陥る懸念があるため,イメージインテンシファイアによる高感度化や長時間露光も同時に検討する方が良いことを明らかにした. また,動的蓄光マーカーをバイオイメージングへ応用できるか検証するため,動物の剥製をリニアアクチュエータで動かしている状況で,対象のトラッキングを行った.通常移動速度が速く,貼り付け・埋め込みマーカーが困難な生体である鳥類の剥製(すずめ)を入手し,実験を行い,トラッキング可能であることを確かめた. さらに,前年度までの成果を発展させ,画角拡張に関する光軸制御技術や光軸制御を利用したインフラ点検手法の研究に取り組み,2件とも国際論文誌に採択されただけでなく,関連技術の外部発表を積極的に行った結果,解説論文に1件採択された.その他,マーカーを使用したトラッキングと比較するため,トンネル壁面環境を模した構造物にバーコード状のパターンを含むマーカーを貼り付け,トラッキングを行ったところ,画像処理が必要になるものの良好なトラッキング精度が得られる見込みだとわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究内容の実施に加え,研究途中で新たに発見した研究課題にも積極的に取り組んだ結果,発展的な成果を得ることができている点では当初の計画以上に発展している.一方で,「無添加蓄光現象の発見」に関する成果については,厳密に再調査を行った結果,化学分野において既報であることがわかった.そのため,今後の対外発表では今回発見した先行研究を引用・比較した上での研究を行う必要があるとわかった.なお,本研究については該当部分について対外発表を行っていなかったことから,新規性や倫理の観点等で問題は発生していない.これらの点を鑑み,「(2)おおむね順調に進展している」として評価を行った.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の状況を鑑み,2023年度は発展的な課題として流体・粉体のトラッキングに取り組む.通常,流体・粉体の流れを可視化するためには,ドップラーレーザーの使用や流体の流路にセンサを含めることが考えられるが,前者は高価であり,後者は手間がかかるため,より良い可視化手法が望まれる.そこで,本項目では項目B-1及びB-2を発展させ,流体・粉体に対して複数の動的蓄光マーカーを発現させることで,流路上を動く媒質のトラッキングを可能とし,各媒質の流れを全体にマッピングすることで,流路全体の流れの可視化を行う.流れ全体の動きがわかるように,複数点の同時トラッキングのソフトウェアの構築も実施する. 極めてチャレンジングな研究項目であるが,実用性が高いことが想定されるため,通年をかけて本項目に取り組む.真値と比較するため,予め可視光カメラで確認可能なマーカーを粉体に仕込み,色によるトラッキングを行うと同時に,本手法によるトラッキングを行い,精度を比較する.流体・粉体として,現在までのところチョコレート,歯磨き粉,食塩等が蓄光することがわかっており(未発表),それらのトラッキングを予定している.
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