研究課題/領域番号 |
20H04340
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63030:化学物質影響関連
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研究機関 | 東京薬科大学 (2023) 筑波大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
新開 泰弘 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10454240)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | サルフェン硫黄 / 環境中親電子物質 / 毒性防御 / 親電子ストレス / GIF/MT3 / 親電子物質 / レドックス制御 / メタロチオネイン / 活性イオウ分子 / 親電子ストレス防御 |
研究開始時の研究の概要 |
カドミウムやメチル水銀などの親電子物質は環境中にユビキタスに存在し、ヒトの健康を障害するリスク因子であることが理解されており、それらに対して生体が備えた防御機構の理解は重要な課題である。本研究では、生体内においてチオール基(SH基)に追加で付加したイオウ原子であるサルフェン硫黄が結合しているタンパク質を単離・同定し、当該タンパク質の環境中親電子物質に対する防御的役割を明らかにすることを目的とする。すなわち、親電子ストレス防御を担うタンパク質とその分子機構の解明を通じて、ヒトの健康の維持・増進への学術的貢献を目指すものである。
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研究実績の概要 |
昨年度までに、マウス脳のサイトソル画分におけるサルフェン硫黄結合タンパク質(SSBP)の1つとして、我々はGrowth Inhibitory Factor (GIF)/Metallothionein-3 (MT3)を同定し、サルフェン硫黄の結合部位についても解析を行った。また環境中親電子物質のモデルとしてメチル水銀を用い、GIF/MT3との反応でそのイオウ付加体であるビスメチル水銀サルファイドに変換されることを明らかにした。そこで本年度は、SSBPの親電子ストレスに対する防御的役割やタンパク質がサルフェン硫黄によって修飾を受ける機能性の変化についてより詳しく解析した。MTは抗酸化性を有することは既に報告されているが、酸化ストレスに対してMT結合性のサルフェン硫黄が果たす役割について検討したところ、GIF/MT3の過酸化水素消去能はKCNによってサルフェン硫黄の結合量の減少により低下した。また、同条件下において亜鉛の結合能も低下した。したがって、GIF/MT3におけるサルフェン硫黄は高い抗酸化能に寄与するだけでなく、高い亜鉛結合能にも関与していることが示唆された。加えて、ヒトグリア芽細胞腫U87細胞において、親電子ストレス(メチル水銀または4-ヒドロキシノネナールの曝露)や酸化ストレス(過酸化水素曝露)によって惹起される細胞死は、GIF/MT3のノックダウンにより増加し、高発現により軽減された。このことから、分子内の約30%がシステインで構成されているGIF/MT3は、おそらくそのチオール基にサルフェン硫黄を保持して、MeHgなどの親電子物質の捕獲・不活性化を介して脳内の親電子ストレス防御を担っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カドミウムやメチル水銀などの親電子物質は環境中にユビキタスに存在し、ヒトの健康を障害するリスク因子であることが理解されており、それらに対する生体防御機構の理解は重要な課題である。我々のグループは、サルフェン硫黄を有するパースルフィド/ポリスルフィドなどの超硫黄分子が環境中親電子物質を捕獲し、不活性なイオウ付加体に変換することを明らかにしてきた。本課題は、研究代表者らが最近確立した手法を用いて、生体内においてサルフェン硫黄が結合しているタンパク質を単離・同定し、当該タンパク質の環境中親電子物質に対する防御的役割を明らかにすることを目的としている。昨年度の成果にて、サルフェン硫黄結合タンパク質のGIF/MT3がメチル水銀をそのイオウ付加体であるビスメチル水銀サルファイドに変換できる機能性を有することを明らかにした。そこで本年度は、SSBPの親電子ストレスに対する防御的役割を細胞レベルで解析することを主たる目的としている。その結果、ヒトグリア芽細胞腫U87細胞において、メチル水銀や4-ヒドロキシノネナールなどの親電子物質によって惹起される細胞死は、SSBPの1つとして同定したGIF/MT3のノックダウンにより増加し、高発現により軽減された。同様に、酸化ストレスのモデルとして過酸化水素の曝露による細胞死に対してもGIF/MT3は防御的に働いていることが分かった。従って本年度の当初の目的は達成されていることから、順調な進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
可能であれば、マウスを用いて個体レベルでのSSBPの機能解析を行う。また、MT分子種以外にも様々なSSBPが親電子ストレス防御に関わっていることが予想されるため、新たなSSBPを同定して機能解析を進める。成果をとりまとめ、学会発表や学術雑誌への論文投稿を行う。
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