研究課題/領域番号 |
20H04341
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63030:化学物質影響関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石原 康宏 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (80435073)
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研究分担者 |
大島 隆幸 徳島文理大学, 理工学部, 准教授 (10397557)
冨永 貴志 徳島文理大学, 神経科学研究所, 教授 (20344046)
大黒 亜美 広島大学, 医系科学研究科(薬), 特定准教授 (20634497)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | ミクログリア / ケモカイン / 化学物質 / 神経回路機能 / 発達神経毒性 / 神経炎症 |
研究開始時の研究の概要 |
医療や産業に使われている化学物質の中には、バルプロ酸やポリ塩化ビフェニルなど、胎児期や乳幼児期の曝露により、成長後の行動異常を引き起こすものが幾らかある。一方、脳内には免疫を担当するミクログリアと呼ばれる細胞が存在し、常に脳内を監視して異物を排除している。本研究では、化学物質の発達期の脳への作用メカニズムについて、ミクログリアに着目して検討する。ミクログリアが過剰に活性化すると、障害作用を有する炎症性分子を放出することから、まずは化学物質と炎症との関連を解析する。
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研究実績の概要 |
世界中でおおよそ10万種類の化学物質が産業的、医学的に利用されていると見積もられている。これらの化学物質は我々の暮らしを豊かにしている一方、一部の化学物質には毒性も指摘されており、ヒト健康リスクとなっている。化学物質の毒性の中で解決されるべきものの一つは発達神経毒性である。すなわち、胎児期や乳幼児期に曝露した化学物質影響が、成長後に具現化する。本研究では、発達期の化学物質曝露を原因とする成長後の行動異常(発達障害)について、脳内免疫担当細胞であるミクログリアの役割に焦点をあてて解析する。特に、活性化したミクログリアが放出するケモカインに着目する。 まず、胎児期のバルプロ酸曝露について研究を行った。バルプロ酸はてんかん治療薬であり、その有効性から広く使用されている一方、妊婦がバルプロ酸を服用すると、生まれてきた児にIQ低下や自閉症様症状が現れることが報告されている。 バルプロ酸胎児期曝露マウスは、成長後に空間認知機能の低下や社会性異常、反復行動など、自閉症様の行動異常を示した。このとき、マウス海馬内においてミクログリアが活性化し、ケモカインの1つであるCCL3を放出していることを明らかにした。CCL3はその受容体CCR5に結合して機能を発現する。そこで、CCR5アンタゴニストであるマラビロクを発達期に母体に投与すると、上記成長後の行動異常が抑制された。これらの成果は、J Neuroinflammation誌(19(1):195, 2022)に発表した。 また、ネオニコチノイド系農薬の発達期曝露によって生じる成長後の行動異常についても作用機序の解析を進めている。イミダクロプリドの発達期曝露により、出生後すぐのミクログリア数が減少し、神経回路機能が興奮性にシフトすることを明らかにした。これらの成果を論文として纏めて投稿したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要の項に記載した通り、胎児期バルプロ酸によって生じる発達神経毒性について、ミクログリアから放出されるケモカインCCL3が成長後の行動異常に関与することを発表した。また、ネオニコチノイド系農薬は発達期曝露についても、仔の脳内で生じる現象を突き止め、論文に纏めて投稿したところである。本研究では重要な成果が得られており、成果の公表についても順調である。従って、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究より、発達期のバルプロ酸曝露により脳内でケモカインCCL3が増加し、CCL3が神経回路機能の異常や成長後の行動障害に関わることを明らかにした。TCDD曝露など、他の化学物質曝露も脳内ケモカインを増加させることから、脳内におけるケモカインネットワークの異常が成長後の行動異常と相関する可能性がある。一方、ケモカインの作用点およびどのようなメカニズムで神経回路機能の成熟を阻害するかについてはまだ科学的証拠はない。そこで、2023年度は神経系におけるケモカインの役割について、特に、ケモカインが作用する細胞種やその結果生じる現象に焦点をあてて研究を遂行する。
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