研究課題/領域番号 |
20H04382
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64050:循環型社会システム関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
杉山 修一 弘前大学, 農学生命科学部, 客員研究員 (00154500)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | メタン / 水田 / 温暖化抑制 / 窒素固定細菌 / メタン分解菌 / 鉄還元菌 / 硫酸還元菌 / 嫌気的分解 / 自然栽培 / 温暖化対策 / メタン放出 / メタンガス / 地球温暖化 / 水田土壌 / 生物的窒素固定 / 微生物プロセス |
研究開始時の研究の概要 |
CO2に比べ強力な温室効果をもつメタンは水田が主要な放出源の一つとなっており,その削減は温暖化防止のための有効な手段である。申請者はこれまでの無肥料栽培で生じる窒素欠乏水田では,メタンをエネルギー源として利用する窒素固定細菌が活性化し,土壌からのメタン放出量の低下をもたらす結果を得た。水田からのメタン放出には炭素・窒素循環に関わる多数の微生物が関与しているため,この結果の普遍性を検証するには,現地水田でのメタンフラックスの測定と同時にそれに関わる微生物プロセスの解明が不可欠である。本研究では,現地での実証データにより,無肥料栽培水田からのメタン放出削減の科学的基盤を確立することを目指している。
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研究実績の概要 |
無肥料栽培では水田土壌の窒素欠乏条件が起こり,窒素固定をする細菌が有利になる。本試験では次世代シークエンスを利用して無肥料条件下で起こる水田の炭素・窒素循環を司る細菌群集の網羅的解析を行った。 弘前市の自然栽培農家の水田から採取した土壌を用い,ポット条件での生育試験を行った。乾燥させた土壌(含水率3%)で育てたイネは湿潤土壌(含水率50%)で育てたイネより2ヶ月後に3倍の生長量と2倍高い葉身窒素濃度を示した。窒素固定細菌群集を解析したところ,乾燥土壌区ではメタン分解菌,硫酸還元菌,鉄還元菌など水田土壌での有機物の一連の分解過程の中で酢酸や水素を利用してエネルギーを獲得する分解の最終段階に現れる細菌群であった。乾燥処理でイネの成育が増加するのは,好気条件で植物繊維などの有機物ポリマーの分解が促進され,分解の下位に位置する窒素固定細菌が活性化し,土壌からの窒素供給が向上することが原因であった。 窒素固定遺伝子を持つ細菌の中には,窒素固定機能を持たない退化した遺伝子の残骸をもつ細菌も存在するので,遺伝子配列から検出された細菌がすべて窒素固定能を持つとは限らない。シークエンス解析により得られたASV(塩基配列を基にした分類単位)のうち,乾燥土壌区でのみ増加したASVを窒素固定に関与した細菌と捉え,上位100のASVの内,乾燥処理で有意に増加したASVを同定した。乾燥処理区で増加したASVは,メタン分解菌(Methylosinus, Methylomonas),鉄還元菌(Geobacter),硫酸還元菌(Desulfobulbis)であり,メタン分解菌の割合が顕著に高かった。このことから,無肥料条件でメタンをエネルギー源とする窒素固定細菌が活性化することで,水田の炭素・窒素循環を大きく変化させる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年から拡大した新型コロナウイルスの流行のため,現地調査ができないことなどから,予定していた研究が実施できず,進捗状況は「やや遅れている」状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
水田の窒素固定に関わる細菌の種類が特定され,今後は実際の無肥料栽培(自然栽培)水田におけるメタン放出の測定データと次世代シークエンスによる土壌の窒素固定細菌群集の関係を明らかにする予定である。 水田からのメタン放出速度は,メタン生成とメタン分解のバランスにより決まるが,そのバランスは,イネの成育時期や土壌の化学組成など多くの要因の影響を受ける。2022年度は,イネの成育にともなうメタン放出と窒素固定細菌群集の変化を明らかにする。
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