研究課題/領域番号 |
20H04402
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
玉田 芳史 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
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研究分担者 |
相沢 伸広 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10432080)
上田 知亮 東洋大学, 法学部, 准教授 (20402943)
河原 祐馬 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (50234109)
木村 幹 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (50253290)
鈴木 絢女 同志社大学, 法学部, 教授 (60610227)
滝田 豪 京都産業大学, 法学部, 教授 (80368406)
中西 嘉宏 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (80452366)
日下 渉 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (80536590)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2022年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2020年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | SDGs / 権威主義体制 / 民主化 / COVID-19 / アジア / 反政府運動 |
研究開始時の研究の概要 |
SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)が世界を席巻している。SDGsが掲げる目標は首肯できるものばかりである。しかし、SDGsの目標群を冷静に眺めると、開発にとって重要な目標の欠落が分かる。その1つが政治の民主化である。 途上国の非民主的な指導者が、国際社会に向かって、SDGs推進を謳う例が少なくない。SDGsを錦の御旗とすれば、民主化への外圧を和らげることができるからではないのか。SDGsは権威主義体制の温存に寄与するという副作用があるのではないか。本研究はこの問いに実証的に答えようとする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、SDGsと民主化の関係の解明である。非民主的な政権であっても、国際舞台でSDGsへの献身のアピールに成功すれば、国際社会から賛辞を送られ、国内での自己正当化に利用しうる。権威主義体制がSDGsを熱心に推進する理由はそこにあろう。SDGsは開発のみならず、権威主義も持続可能にしうる。本研究は、アジア諸国の具体例に基づいて、SDGsのそうした副作用を察知し、SDGsが健全に推進されることを目指す。 2020年から世界中で流行したCOVID-19は、その克服がSDGsの達成にとっては不可欠であり、その感染拡大阻止やワクチンの調達が各国にとって急務の課題となった。COVID-19は国民の生死に関わるため、対策の成否は各国の政府への評価に直結する。それゆえに、本年度もCOVID-19を注視しながら、SDGsと民主化の関係について研究を進めた。 COVID-19対策は、民主主義にとって危険をはらんでいることを確認できた。第1に、WHO(世界保健機関)に代表される国際機関は、COVID-19封じ込めという結果を重視して、権威主義体制をも好意的に評価することがある。実際に、WHOは2020年11月に、COVID-19封じ込めの模範例としてタイを賞賛した。また、世界各国の健康危機対処能力を示すGHS指数で、タイは2019年には世界6位であったものが21年には5位へと順位をあげた。第2に、政府は感染拡大阻止を大義名分とすれば、国民の政治的自由を制限しやすい。これはCOVID-19がはらむ民主化にとって深刻な問題である。第3に、COVID-19は権威主義体制の強化に加えて、国民の弱体化も招く。COVID-19は国民を健康への懸念や不安ゆえに萎縮させ、権威主義体制に挑戦する力を国民からそぎ落とす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の感染状況が改善せず、前年度同様に研究対象国での調査ができなかった。そこで引き続き、COVID-19に軸足をおいて研究を実施した。それによって、COVID-19が民主化にとって危険であることがますます明らかになった。タイでは、2020年に始まった若者主体の反政府運動は2021年にも活発に続けられた。 タイで反政府運動が盛り上がったのは、政府が一方では政治集会を規制しつつ、他方ではワクチンの調達に不手際があったからである。感染拡大に伴って、国民がワクチン接種を切望する中、政権は2020年に締結した調達契約の遵守に拘泥した。国王所有の会社(Siam Bioscience /SBS)がアストラゼネカ社のワクチンを、政府から補助を受けつつ、タイで製造し、政府が買い上げて摂取するという段取りになっていた。しかしながら、2021年4月に感染の新たな大波が押し寄せたとき、SBSはワクチンをまだ供給できなかった。このため、政府は中国からワクチンを調達して摂取した。国民の間では効果が高いと伝えられるmRNAワクチン(ファイザーとモデルナ)を求める声が高まったにもかかわらず、政府は応じようとしなかった。政府が両社のmRNAワクチンの調達に乗り出すのは、SBSによるワクチン供給量が需要に追いつかないことを確認した2021年7月以後のことであった。 このため、政府はワクチンの調達や供給にあたって、国民の健康にもまして、君主制の人気や権威に配慮したのではないかという猜疑の目を向けられることになった。そうした疑問を公言した政治家は、不敬罪で訴追されることになった。政権が守ろうとする君主制への隠喩を用いた批判が増えると、不敬罪で摘発されるものが増えた。こうした権威主義化は、2021年2月にクーデタが起きたミャンマーや、習近平が2022年10月に総書記三期目を狙う中国でも顕著に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19封じ込めに寄与した非常事態宣言には、経済活動とりわけ観光業への打撃ならびに政治的自由への過剰な制限という問題もあった。それにもかかわらず、政権は非常事態宣言を解除しなかった。理由は主眼が反政府勢力の封じ込めにあったからと考えられる。 タイでは、政権が守ろうとしているものが国民よりも君主制であることが判明することによって、君主制への批判が強まることになった。そこで政権は新たな対応を求められることになった。国王中心の権威主義体制を守るために、あるいは君主制そのものを守るために、政権がSDGsをどのように利用するのかを掘り下げていきたい。この点については、SDGs=持続可能な開発目標(sustainable development goals)のうち、持続可能な開発(sustainable development / SD)が、タイの9世王プーミポン(在位1946~2016年)が1997年から唱道する「足るを知る経済」(sufficiency economy philosophy / SEP)と同一であると主張されていることに注目していきたい。国際機関や各国政府がSDGsを推進し、SDを賞賛すれば、それはSEPの賞賛に直結するはずである。平成3年度には、タイの研究協力者の力添えを得て、この点について掘り下げてみたい。 また、平成3年度には京都で第14回国際タイ学会の開催が予定されており、COVID-19をめぐる政治に関するパネルを企画し、平成2年度からの研究成果の一部を公開して議論を深めることを予定している。
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