研究課題/領域番号 |
20H04429
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 教授 (20324676)
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研究分担者 |
河野 佳春 弓削商船高等専門学校, 総合教育科, 准教授 (00224816)
小野 林太郎 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (40462204)
小河 久志 亜細亜大学, 国際関係学部, 准教授 (50584067)
鈴木 佑記 国士舘大学, 政経学部, 准教授 (60732782)
島上 宗子 愛媛大学, 国際連携推進機構, 教授 (90447988)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2020年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 津波 / 海辺居住 / レジリエンス / インドネシア / タイ / 海民 / バジャウ / モウケン |
研究開始時の研究の概要 |
津波常襲地の海域東南アジアには、かつての船上居住民のような周縁海民が拡散居住する。周縁海民は、内陸に住む集団に比してより甚大な津波被害を被ってきた。にも拘わらず、罹災後には居住の場を再び海辺に戻すことが多い。それはかれらが海辺に住むことにより、罹災後の不確実な状況に対処しながら生活を再建する力、レジリエンスを確保しているからにほかならない。本研究では、東インドネシアと南タイの周縁海民を対象として、かれらが海辺居住により確保してきたレジリエンスのあり方を明らかにしようする。その上で最終的には、海域東南アジアの周縁海民における在地の(ヴァナキュラーな)復興の論理を析出することを目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度8月から、前年度まで新型コロナウィルス感染拡大のために実施できなかった海外調査を実施できるようになった。海外調査を担当する「周縁海民」班は、2022年8月と2023年3月に、インドネシア・スラウェシ島のタカボネラテ、パル市、バンガイ島で、タイ南西岸プーケットで津波被災と復興、レジリエンスに関する調査をおこなった。タカボネラテは1991年に、パル市は2018年に、バンガイ島は2000年、タイ南西岸は2004年に、それぞれ津波災害を被っている。他に国内では、静岡県西部、和歌山県三陸、和歌山県南紀で、沿岸利用に関する観察調査を行った。「歴史過程」班は、国立国会図書館等において歴史地震研究会等による東南アジア津波被災に関する資料調査・分析を行った。「制度・政策」班は京都大学東南アジア研究所等でインドネシア政府の自然災害対応に関する資料調査を進めた。また、9月には、中部スラウェシ震災の被災地区を踏査するとともに、パル湾湾岸部に建設された防潮堤や被災者の移転住宅地などを視察、聞取りを行った。 プロジェクト全体としては、2023年2月に、愛媛県の尾道から愛南地区までの沿岸土地利用、海産資源利用に関する巡検をおこない、同時に愛媛大学で合同研究会を実施した。研究会は、それぞれの調査実施状況を報告した。いずれのメンバーも本プロジェクトによる海外調査を実施したのは、今年度がはじめてであった。しかし、多くがすでに調査地でラポールを築いていることから、周縁海民の自然災害への対応に関して一定の聞取り調査を実施することができた。これらの調査からは、対象とする周縁海民が移動性、商業性、ネットワーク性といった社会的特徴を活かすかたちでこれまで自然災害に対応し、海辺居住の様式を再編してきたことが確認された。今後はその歴史過程を、具体的なデータでうめていくことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度前半まで、新型コロナウィルス感染拡大のため、研究活動の中心であるインドネシアとタイでのフィールドワークおよび現地資料調査を実施することができなかったことが大きな理由である。現地の資料はほとんど電子公開されておらず、文献に基づく調査には限界があった。インドネシア・タイの研究協力者もまた、2022年度前半までフィールドワークをおこなうことは出来なかった。2022年度後半には上記のとおり現地調査をおこなった。しかし、調査地では夏期までに新型コロナ感染状況に対する警戒感が弱まっておらず、また現地協力者との日程調整がとれず、本格的な調査を実施するまでにいたっていない。またインドネシアの場合、8-9月の段階では、現地の大学もポストコロナ状況への対応に追われており、現地協力者と協力しながらのフィールドワークは予備的なものにとどまらざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり、インドネシア、タイのいずれにおいても本格的な調査は2023年度からようやく可能になる。2023年度は、現地協力者と事前に十分に打合せをおこなったうえで、これまでの不足を補いつつ現地調査を進める予定である。7月には、モノと人のフローに焦点をおいて東南アジア史を再検討することを目的とするシンポジウムを、東南アジア学会と合同で東洋大学において開催する。同シンポジウムでは、東南アジアにおける海産資源利用がいかに海民社会の生成・維持と関係し、同社会のレジリエンスの基盤をなしていたのかが論じられることになるだろう。このシンポジウムには東南アジア史研究の第一人者であるオーストラリア国立大学のアンソニー・リード氏を招聘し、上述の目的に関する意見交換をおこなう。これらの成果の一部は、2023年度中に東洋大学アジア文化研究所の『年報』に掲載する。1月の東洋大学アジア文化研究所の年次集会では、インドネシアとタイでの調査をふまえた成果報告をおこなう予定である。
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