研究課題/領域番号 |
20H04457
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
曽山 和彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 副ディビジョン長 (90343912)
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研究分担者 |
林田 洋寿 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 副主任研究員 (50444477)
山村 和也 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60240074)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2020年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | 中性子顕微鏡 / 中性子スピン / ウォルターミラー / 数値制御プラズマCVM / スーパーミラー / プラズマCVM / レプリカ法 / Wolterミラー |
研究開始時の研究の概要 |
偏極中性子は、中性子スピンと高い物質透過性を有することから、材料深部の磁気モーメントを観察する最適なマイクロプローブとなりうる。本研究では、Wolter I型拡大結像光学系に基づく回転非球面スーパーミラーを作製し、中性子スピン偏極コントラスト法を用いた高分解能中性子顕微鏡を開発する。これにより、スピントロニクス分野で注目される磁気記録素子等の磁気モーメント分布や、変圧器等に用いられる軟磁性材料など実用磁性材料の磁気イメージングを実現する。
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研究実績の概要 |
令和3年度におけるレプリカ法用高精度マンドレルの製作では、令和2年度に、プラズマCVM加工後に残る反応堆積物の除去方法として見出したO2ガスを導入する方法をもとに、引き続き、投入電力、ガス流量等の最適化を図ることによって、加工制御性を更に向上できることを示した。それらの結果をもとに実機の高精度マンドレルの製作を行ったところ、サブミクロンオーダーの高形状精度のWolter形状を加工することに成功した。 また、レプリカ法における新たな離型剤の提案として、マンドレルの表面に付着させる離型剤として低融点金属(スズ)の検討を行った。多層膜スーパーミラーをマンドレルに成膜する際は、離型剤による表面粗さがミラー構造の劣化、反射率の低下に繋がり、高臨界角のスーパーミラーには大きな課題となる。そこで、マンドレルとなるガラス表面にスズを成膜し、その後、ミラー材料であるニッケル膜を成膜、さらにその上からニッケル電鋳を行った。これを加熱処理することで、低融点金属であるスズを融解しミラー自体を離型させた。その結果、スズ成膜後の表面粗さは小さく、高臨界角スーパーミラーの成膜に適することが分かった一方で、加熱によって離型させる際に、ガラス表面からのミラー離型の歩留まりが悪いことが明らかとなった。 偏極中性子を用いた顕微鏡用ビームライン整備として、垂直磁化膜測定のための中性子スピン干渉計のガイド磁場コイルの設計を行った。設計には磁場計算ソフトELF/Magicを用いた磁場シミュレーションを実施した。また、設計したガイド磁場コイル制御用の直流電源、偏極デバイス制御用の自動ステージを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画と比較して、レプリカ用高精度マンドレルの製作や、レプリカ法で使用する新たな離型剤の検討に時間を要したため、研究の進捗に遅れを生じている。 レプリカ用高精度マンドレルの製作では、流体ジェット研磨システムによる反応堆積物等の除去を提案したが、流体ジェットにより合成石英マンドレルの先端部細管に破損が生じることが判明したため、プラズマCVMの加工条件を変更することにより反応堆積物を除去する方針に変更したため時間を要した。しかし、検討の結果、O2ガスを導入することにより、表面粗さを低減できることが明らかとなり、当該方法を用いて、サブミクロンオーダーの形状精度を有する実機製作に成功した。 また、回転非球面の高臨界角スーパーミラーを製作するため、レプリカ法における新たな離型材として、低融点金属の適用を検討した。マンドレルとスーパーミラーの間に低融点金属(スズ)を成膜することで、加熱処理によって離型する機能を持たせた。しかしその結果、離型させる際に、ミラー膜がマンドレルに残る状況が見られ、製作歩留まりが悪い状況が発生した。 これらのことから、回転非球面多層膜スーパーミラーの実機製作は予定より遅れ、中性子による特性評価もビームライム申請に間に合わず延期となったため、現在の状況は遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に比べ遅延が生じたが、レプリカ用高精度マンドレルの製作については、目標通りサブマイクロメートルの形状精度を達成している。高臨界角スーパーミラーの成膜における課題となる離型剤による表面粗さの増大については、低融点金属を利用する手法について詳細なパラメータ検討を行い、製作歩留まりを向上させるとともに、従来のシリコン剤を用いる方法の中で、表面粗さを低減する方法についても検討を行い実機製作を実現する。偏極中性子を用いた顕微鏡用ビームライン整備や、高分解能2次元中性子検出器については、計画通り準備が進んでいることから、令和4年度は目標を達成するため、研究を推進する。
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