研究課題/領域番号 |
20H05620
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
河岸 洋和 静岡大学, 農学部, 特任教授 (70183283)
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研究分担者 |
天池 一真 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (00866600)
鈴木 智大 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (10649601)
室井 誠 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (30261168)
高橋 公咲 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (30374622)
謝 肖男 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (30610323)
野村 崇人 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (60373346)
大内 仁志 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (70798842)
一家 崇志 静岡大学, 農学部, 准教授 (90580647)
菅 敏幸 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10221904)
伊藤 英人 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (70706704)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
616,850千円 (直接経費: 474,500千円、間接経費: 142,350千円)
2024年度: 93,600千円 (直接経費: 72,000千円、間接経費: 21,600千円)
2023年度: 93,730千円 (直接経費: 72,100千円、間接経費: 21,630千円)
2022年度: 93,730千円 (直接経費: 72,100千円、間接経費: 21,630千円)
2021年度: 138,320千円 (直接経費: 106,400千円、間接経費: 31,920千円)
2020年度: 197,470千円 (直接経費: 151,900千円、間接経費: 45,570千円)
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キーワード | フェアリー化合物 / 植物ホルモン / フェアリーリング |
研究開始時の研究の概要 |
芝が輪状に周囲より繁茂あるいは枯死した後にキノコが発生する現象を「フェアリーリング」という。研究代表者はこの現象の原因物質(AHX,ICA,AOH)を発見した。その後,これら3物質(フェアリー化合物,fairy chemicalsと総称,FCsと略称)の植物における内生が判明し,さらに圃場試験において農作物の増収効果を示した。本研究では,植物と菌類中で新規な経路でこれらの物質が生合成されることを明らかにし,活性発現分子機構を解明する。また,農業への実用化を目指しFCsの作物の栽培実験での効果と作用機構を検討する。最終的にはFCsが新しい植物ホルモンであることを証明する。
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研究実績の概要 |
代表的な結果を以下に示す。 1.FCsの植物中の代謝産物として、それらのメチル化体を予想し、化学合成した。そして、AHXとAOHと類似な構造を持つキサンチンのトリメチル体であるカフェインを多量に産生するチャノキの細胞を各FCsで処理し、合成標品を用いてLC-MS/MSで分析したところ数種のメチル化AHXとメチル化AOHが生成していることが判明した。さらに無処理のチャノキに内生していることが明らかになった(投稿準備中)。 2.シロイヌナズナの最もAHXに感受性が高い系統(E185系統)より,EMS変異原処理を行い,AHX非感受性となった変異体表現型の解析を行った結果、ABA欠損変異株に類似した表現型を示す変異体のグループが観察された。この変異体に関してはABA関連遺伝子のシーケンスを進め、一部の変異体の変異部位の決定に成功した。 3.FCsが生体内で代謝を受けることでメチル化誘導体やアセチル化誘導体、脂肪酸とのアシル化誘導体などが生じているのではないかと予測したことから、活性試験や標品に用いるべくFCsを原料に各種誘導体を化学合成した。またシロイヌナズナへの取り込み実験のため、AHX riboside の一級ヒドロキシ基からリンカー鎖を伸長し、蛍光団としてTexas Redを導入したプローブ分子を合成した。 4.ブドウなどの果実成長への影響を調べた結果、シャインマスカットの糖度、新鮮重、大きさにおいて非投与とくらべ、いずれ約3割の増加が認められた。皮膚のセラミドへの促進効果の検証を行った。セラミド産生に関与する酵素タンパク質の遺伝子発現を確認したところ、AOH, AHX, ICAにおいて、角層セラミド産生に関与する酵素タンパク質の遺伝子発現の増加が認められ、角層セラミド量の増加を促す作用が確認され、皮膚塗布により水分保持機能及び皮膚バリア機能の改善効果を有する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で記したとおり、初期の目的には無かった成果を上げている。その例としては、生体内でのFCsの代謝産物を予想し化学合成し、AHXとAOHのメチル体数種が内生していることを証明した。また、植物ホルモンとしての証明のための研究は、イネやシロイヌナズナなどを用いて、FCsの受容体・シグナル因子の候補が数種判明した。応用研究では、ブドウに対して実用化できるような効果が見出され、2024年6月までに特許を出願し、その後論文として発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に続き以下の検討を行う。 1 さらなるFCs代謝産物を単離,構造を決定し,植物での内生の有無と生理活性を明らかにする。また、代謝産物を予想し化学合成し,植物での内生の有無と生理活性を明らかにする(担当:河岸)。2 シロイヌナズナのABA関連遺伝子のシーケンスを進め、その変異を確認する。異種発現等を用いてそれら遺伝子の機能解析等を行う(担当:室井,高橋,野村,謝,鈴木,河岸)。3 蛍光標識化あるいはsp3炭素でラベル化したAHXを用いてその植物体内での生理学的挙動を、蛍光あるいはラマン分光法を用いて観察する(担当:鈴木,河岸)。4 SPR装置を用い,FCsの受容体・シグナル因子の発見を目指す。FCsとの結合が予想されるいくつかの受容体・シグナル因子候補とFCsの相互作用を解析し,本タンパク質がFCs結合タンパク質であることを証明する(担当:野村,謝,室井,高橋,河岸)。5 植物体におけるICA投与とSAMから生合成されるニコチアナミン(種子植物に普遍的に存在する金属キレート)の関連性について解析を行う。また、SAMが関与する様々な植物ホルモンのメチル化反応に関して解析を行う(担当:野村,河岸)。6 イネコアコレクションを対象にFCs内生量をイオンモビリティ質量分析により定量し,生合成に関わる遺伝要因をGWASにより明らかにする。FCsの作物に対する効果の最適条件と圃場レベルでの効果を明らかにする(担当:一家,謝,河岸)。7 FCsの新規合成方法について検討する。FCsのアシル化体等の合成を行い,植物における内生の有無や生理活性を検討する。(担当:大内,謝,河岸)。8 FCsの迅速誘導化反応によって,高活性誘導体の合成及び標的タンパク質同定のためのプローブ分子の合成を行う(担当:天池,大内,河岸)。9 FCsのブドウへの効果の再現性を検討する(担当:謝,河岸)。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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