研究課題/領域番号 |
20H05622
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川上 養一 京都大学, 工学研究科, 教授 (30214604)
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研究分担者 |
船戸 充 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70240827)
石井 良太 京都大学, 工学研究科, 助教 (60737047)
岡本 晃一 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50467453)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
560,950千円 (直接経費: 431,500千円、間接経費: 129,450千円)
2024年度: 65,000千円 (直接経費: 50,000千円、間接経費: 15,000千円)
2023年度: 91,000千円 (直接経費: 70,000千円、間接経費: 21,000千円)
2022年度: 117,000千円 (直接経費: 90,000千円、間接経費: 27,000千円)
2021年度: 143,000千円 (直接経費: 110,000千円、間接経費: 33,000千円)
2020年度: 144,950千円 (直接経費: 111,500千円、間接経費: 33,450千円)
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キーワード | 発光シンセサイザー / 半導体3次元構造 / 次世代照明 / 深紫外フォトニクス / 光空間無線通信 / 発光高効率化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,半導体3次元構造による発光波長の合成,分極制御・プラズモニクス効果などに着目し,任意の波長の光を高効率で発光させる新機能素子の開発を目指す.このことによって,任意の演色性を可能とする究極のテーラーメイド照明光源や高度な加工・バイオ応用などで求められる深紫外多波長光源を実現する.さらに,光源の多波長・高速スイッチングによる光空間無線通信を実証し,次世代通信システムへの基盤を確立する.
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研究実績の概要 |
発光シンセサイザー実現は,テーラーメイド照明,可視光通信(Li-Fi),およびマイクロLEDディスプレイ等の応用に大きなインパクトが期待されている.われわれは,半導体3次元構造からの多波長発光制御がそのためのキーテクノロジーとして捉え研究を推進している. GaNテンプレート上にストライプ上のSiO2マスクを形成し,その上に有機金属気相エピタキシー(MOVPE)による選択再成長を行うことによって形成したInGaN系3次元マルチファセット構造制御に関する研究を推進し成果をあげてきた.一方で,マルチファセット構造ではエネルギー的に安定な結晶面が現れやすく,3次元構造の自在制御という点で課題があることも事実である. そこで,ここ数年間は新たな多波長発光構造の作製にも取り組んでいる.具体的には,MOVPEによるInGaN成長時のIn取り込み効率の結晶面方位依存性に着目し,連続的にオフ角が変化する凸レンズ形状のInGaN系マイクロレンズ構造の有用性を発見するとともに,一昨年はその作製に成功している.また昨年は,上記構造からの多波長発光機構の解明と多波長LED動作の実証などの実績を上げた.これら成果は,基板面との傾斜角が10°以下と非常に緩やかな三次元構造であっても,多波長制御が可能であることを示しており.選択成長法では現れにくい不安定面も利用できる点,トップダウン的な高度な加工技術を必要としない点,比較的平坦な構造であるためにLED作製プロセスが容易である点などから,今後のさらなる発展が期待できる. また,InGaN/GaN試料にSiO2薄膜を製膜し,紫外レーザーを照射し続けることで,プラズモニクスと同様の著しい高効率化が達成できることを見出した.この方法により,金属を用いることによるプラズモニクスの難点をすべて解決できる可能性があり,実用レベルでの高効率LEDへの展開が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GaNマイクロレンズ構造は,サーマルリフロー法とドライエッチングによって作製した.具体的には,サファイア基板上(0001)面GaNテンプレート上に,フォトリソグラフィによって円形レジストを形成した.つぎに,サンプルをホットプレート上で加熱し,レジストを凸レンズ形状に熱変形させた.そして,ドライエッチングによりレジスト形状をGaN表面に転写し,最後に,MOVPEによってアンドープGaN層とInGaN/GaN QW層を成長した.試作したマイクロレンズの直径は20μm程度であり,(0001)面からのオフ角が,構造の頂点部で0°であり,構造の外周部へ行くにしたがって約8°まで増加することが分かった.カソードルミネッセンス(CL)測定によって構造内での発光波長分布を評価した結果,頂点部で約490 nm,外周部に向かって短波長化し,構造底部で約400 nmであり,各波長成分は,マイクロレンズ構造の頂点部を中心として同心円状に分布することも確認された.さらに, GaNマイクロレンズ構造上InGaN LEDを試作し,380 nmから500 nmまで広がる広帯域なELスペクトルを得ることに成功した.今後の展開としては,マイクロレンズ構造の特徴として,オフ角分布に対応した連続的な波長分布を有しているため,各波長成分に対応する領域を電気的に独立制御することで,自在なスペクトル制御が可能になると期待される. さらに,SiO2膜と紫外レーザー照射による高効率化について,様々な条件で実験・検証を繰り返し,その詳細な原因・機構についての解明を進めた.それらに基づいて更なる高効率化が得られる条件も最適化されてきており,デバイス応用が期待できる.この現象は著しい波長依存性があり,黄緑~赤色の高In組成の長波長発光域において特に効果があるため,グリーンギャップ問題の解決にも貢献できる可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
(1)「InGaN系3次元錐台構造による多波長発光の研究」:複数の結晶オフ角を有するGaN錐台構造や結晶オフ角が連続的に分布するマイクロレンズや半円柱状のGaNテンプレート構造上にInGaN系3次元LED構造を作製し,独立した電極からの電流注入によるスペクトル合成を実現する.それにより,色度座標上でのチューニング領域拡大や光空間無線通信(Li-Fi)の変調帯域向上に取り組む. (2)「AlGaN系深紫外発光構造の短波長化」:波長が220nm~240nmの領域は,人体への影響が少なくウイルスのみを選択的に不活性化させるため高効率LED開発が喫緊の課題となっている.AlリッチAlGaN/極薄GaN量子井戸,ステップテラス上のAlGaN局在発光中心,さらには半極性AlN基板上AlGaN量子井戸など,さまざまなアプローチから上記の波長領域での高効率な発光を目指す. (3)「近接場光学顕微鏡(SNOM)による顕微分光による基礎光物性評価」:昨年導入したSi中空逆ピラミッド構造に微小開口を設けたSNOMプローブは,自由開口であるため高い光スループットが得られる.このプローブを用いたSNOMによる顕微フォトルミネッセンス測定によって,InGaNおよびAlGaN構造の輻射・非輻射再結合機構を解明する. (4)「発光波長の制御と高効率化」:昨年度に引き続き,金属種,ナノ構造,配列によるプラズモニクス制御と3次元InGaNおよびAlGaN構造を組み合わせることで,可視域全域および近紫外から深紫外域までの広範囲において多波長発光の波長制御と高効率化に取り組む.SiO2膜と紫外レーザー照射による高効率化の物理機構の解明も推進し,本手法とプラズモニクス効果との相乗効果を取り入れる形でデバイス応用への礎を構築する.
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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