研究課題/領域番号 |
20H05626
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 東京大学 (2024) 京都大学 (2020-2023) |
研究代表者 |
齊藤 博英 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (20423014)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
375,830千円 (直接経費: 289,100千円、間接経費: 86,730千円)
2024年度: 72,670千円 (直接経費: 55,900千円、間接経費: 16,770千円)
2023年度: 72,670千円 (直接経費: 55,900千円、間接経費: 16,770千円)
2022年度: 72,670千円 (直接経費: 55,900千円、間接経費: 16,770千円)
2021年度: 72,670千円 (直接経費: 55,900千円、間接経費: 16,770千円)
2020年度: 85,150千円 (直接経費: 65,500千円、間接経費: 19,650千円)
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キーワード | RNA / 人工細胞 / 合成生物学 / 合成生命システム / RNP / RNA-Protein相互作用 / 人工オルガネラ / 生命の起源 / artificial cell / synthetic biology |
研究開始時の研究の概要 |
生命の起源から現在に至るまで、RNAやRNP(RNA-タンパク質複合体)は生命機能の制御に重要な役割を果たしている。しかし、その解明はいまだ十分ではない。本研究では、細胞の機能制御を担うRNAやRNPに注目し、細胞内での制御ネットワークや作動原理を解明する。さらに、その理解に基づいて細胞の機能を制御する人工RNA/RNPシステムを構築し、医療や生命工学上有用な技術を開発する。また、RNA/RNPに基づく生命の起源モデルを構築し、生命システムの創発原理の解明を目指す。以上、RNAやRNPが司る生命現象の理解と制御を通じて、「合成生命システム創生分野」を切り拓く。
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研究実績の概要 |
RNAを基盤とする生命システムが細胞の機能制御に果たす役割の多くは未知のままである。またRNAやRNA-Protein (RNP)相互作用は、生命の進化の過程で本質的な役割を果たしたと考えられるが、それらがいかに細胞や生命のシステムを形成するに至ったのか、その構築原理の解明には至っていない。本研究では、(1)細胞機能を制御するRNP相互作用ネットワークを包括的に同定するとともに、(2)RNPによる細胞内構造物の作動原理を解明し、細胞内で機能する人工RNPを構築する。また、得られた知見を生かして、(3)哺乳類細胞や個体で作用する人工のRNA・RNPシステムを開発する。同時に、(4)生命システムの創発原理の解明を目指し、人工RNA細胞モデルの創出に挑む。
本年度は、主に研究項目(3)に取り組み、マイクロRNA(miRNA)やRNA結合タンパク質に応答して環状RNAからの遺伝子発現を制御できる「環状RNAスイッチ」を開発した。さらに、2種類の環状RNAスイッチを組み合わせることで、発現持続性の高い人工遺伝子回路の構築にも成功した。このシステムにより、細胞や生体内での発現持続性が高い環状RNAからの遺伝子発現を精密に制御することが可能となる。また、ウイルス由来の酵素を用いてmRNAの5’末端に様々なキャップ構造を付加することで、翻訳効率を向上させたり、ビオチンや蛍光分子等の機能性分子を付与したりする技術の開発に成功した。これらの成果は、将来的にmRNA医薬や生命科学の研究分野に有用なツールの開発に繋がると考えられる。
さらに現在、研究項目(3)、(4)に関連して、細胞内の入力分子の情報を、任意の遺伝子発現の出力に変換する技術の開発に取り組んでいる。次年度はこれらの技術を人工細胞モデルに応用し、人工細胞モデルの制御と理解を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に、(3)人工のRNA・RNPシステムの基盤技術の開発に取り組んだ。その結果、細胞や生体内で発現持続性の高い環状RNAを組み合わせた人工遺伝子回路を開発した。このシステムはmiRNAやタンパク質に応答して環状RNAからの遺伝子発現を制御できる新規システムである。また、mRNAの5'末端に機能性キャップ構造を付加することで、翻訳効率を向上させたり機能性分子の付加したりできる技術を開発した。
また、人工的な遺伝子発現制御ネットワークの構築による哺乳類細胞の制御を目指して、翻訳制御に利用可能なRNPモジュールを大幅に拡張することに成功した他、転写制御を用いて細胞内の様々な入力分子の情報を任意の遺伝子発現出力に変換できる技術の開発に取り組んでいる。研究項目(3)に関連する一連の研究成果は、(4)生命システムの創発原理を解明し人工RNA細胞モデルを創出するための基盤技術となるものである。
以上のように、遺伝子の転写・翻訳を制御するRNA・RNPモジュールの開発に関する成果が得られていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
【医療応用に資する機能性人工RNA/RNPシステム・細胞の開発】 これまでに構築してきたmiRNA応答スイッチやタンパク質応答型スイッチを中心とした遺伝子発現制御技術と、mRNAの翻訳効率や発現持続性を向上する技術を統合し、培養哺乳類細胞のみならず、マウス個体や人工細胞モデルにおいても機能する機能性人工RNA/RNPシステムを開発する。 【生命進化における人工RNA/RNP 細胞モデルの創成】 RNAからなる小胞構造の形成について解析を行い、RNA細胞モデルの設計原理の確立を目指す。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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