研究課題/領域番号 |
20H05628
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
柚崎 通介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40365226)
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研究分担者 |
渡辺 雅彦 北海道大学, 医学研究院, 特任教授 (70210945)
武内 恒成 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90206946)
山口 玲欧奈 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (50812640)
坂内 博子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40332340)
尾上 浩隆 京都大学, 医学研究科, 研究員 (80214196)
伊佐 正 京都大学, 医学研究科, 教授 (20212805)
溝口 明 三重大学, 医学系研究科, 産学官連携講座教授 (90181916)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
602,160千円 (直接経費: 463,200千円、間接経費: 138,960千円)
2024年度: 99,710千円 (直接経費: 76,700千円、間接経費: 23,010千円)
2023年度: 98,670千円 (直接経費: 75,900千円、間接経費: 22,770千円)
2022年度: 102,570千円 (直接経費: 78,900千円、間接経費: 23,670千円)
2021年度: 110,760千円 (直接経費: 85,200千円、間接経費: 25,560千円)
2020年度: 190,450千円 (直接経費: 146,500千円、間接経費: 43,950千円)
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キーワード | ニューロン / 神経回路 / シナプス / 細胞外基質 / 補体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、新しいシナプス形成分子群「細胞外足場タンパク質(Extracellular Scaffolding Proteins: ESP)」のシグナル伝達機構の解明を進める。またESPの構造生物学的知見に基づき、さまざまな神経回路の特定のシナプス形成・除去・機能を直接操作できる人工シナプスコネクターを開発することによって、精神・神経疾患や発達障害の病態解明と治療方法の探索を目指す。
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研究実績の概要 |
神経細胞は「シナプス」と呼ばれる接着構造によってお互いに結合してさまざまな神経回路を構成する。多くの精神・神経疾患ではシナプスに異常がみられることから、シナプス形成を担う分子群の解明は基礎・臨床神経科学における最重要課題の一つである。近年、私たちは新しいシナプス形成分子として、細胞外足場タンパク質(Extracellular Scaffolding Protein: ESP)という概念を確立した。ESPが従来のシナプス形成分子と異なる特徴の一つは、発達時のみでなく生涯にわたって、神経活動に応じたシナプスの再編や機能を制御する点にある。興味深いことに、速い神経伝達を担うグルタミン酸やGABAによる古典的なシナプス以外にも、神経細胞間には接着構造(非シナプス性接着構造)が存在することがわかってきた。本研究では、ESPに属するシナプス形成分子によるシナプスや非シナプス性接着構造の形成・維持機構の解明を進める。またESP の結晶構造を元にして人工的コネクターを開発することによって、神経回路網や非シナプス性接着構造の生理的機能を明らかにし、新しい観点から脳の動作原理および精神・神経疾患の病態の解明を進める。 本研究ではESPとして、補体ファミリー分子C1q, Cbln4, C1ql1、さらに神経ペントラキシン(NP)を中心にシグナル伝達機構の解明を進めてきた。まず、シナプス分子群が、シナプスにどのように局在するのか、という基盤的な知見を得るために超解像度観察のための膨張顕微鏡法を確立した。またシナプス刈込みに関与する補体 C1qの受容体を同定した。さらにC1ql1が細胞接着型Gタンパク質共役受容体Bai3に加えてカイニン酸受容体と結合することによってシナプス形成を制御することを明らかにした。最後に、非ヒト霊長類の脊髄損傷モデルを用いてCPTXの効果の検証を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非ヒト霊長類の脊髄損傷モデルを用いたCPTXの効果の検証については、協力研究機関である英国での動物実験の許可を得るために時間がかかったことや、コロナ禍の影響を受けて非ヒト霊長類の入手が困難になったことから、研究成果の論文化が遅れているが、その後順調に研究が進んでいる。一方、長年謎であったC1qの受容体を同定したこと、C1ql1ファミリーの受容体として報告したBai3とカイニン酸受容体が、三者複合体を形成することでシナプス形成を制御することを初めて見出したこと、さらに、扁桃体延長領域や側坐核での非シナプス性接着構造の発見と分子機構を初めて解明したことから、達成度として「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
ESPによるシナプス制御機構については、まずC1ql1が従来考えられていたように細胞接着型Gタンパク質共役受容体Bai3に加えてカイニン酸型グルタミン酸受容体KARと三者複合体を形成することによって登上線維ープルキンエ細胞シナプスを制御するという発見について論文化する。同様に、新しく同定したC1q受容体についての論文化を進める。海馬におけるCbln1とCbln4によるシナプス制御機構については、さらに解明を進めて論文化する。脊髄後根神経節において痒みや触覚を伝達する経路にそれぞれ特異的に発現するCbln1やCbln2の機能や、蝸牛外有毛細胞に局在するCbln1の機能についての解明を進める。 一方、ESPを中心とした非シナプス性接着機構と役割の解明については、扁桃体延長領域における結合腕傍核入力との間の非シナプス性接着構造、および線条体における黒質よりのドーパミン作動性入力との間に形成される非シナプス性接着構造について、それぞれ関与するESPの分子局在の解明とともに、生理的な役割を明らかにして論文化の準備を進める。 人工コネクターCPTXについては、非ヒト霊長類を用いて脊髄損傷後の巧緻運動の回復を指標としてその効果を検証し臨床応用に繋げていく。ESPの構造を元にして設計した新規人工シナプスコネクターについて、培養神経細胞での検証を進めるとともに、脊髄損傷や慢性疼痛モデルを用いた性能の検証を進める。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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