研究課題/領域番号 |
20H05635
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分B
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
須田 利美 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 教授 (30202138)
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研究分担者 |
前田 幸重 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50452743)
本多 佑記 東北大学, 先端量子ビーム科学研究センター, 助教 (70807685)
岩田 高広 山形大学, 理学部, 教授 (70211761)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
172,250千円 (直接経費: 132,500千円、間接経費: 39,750千円)
2024年度: 16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2023年度: 17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2022年度: 17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2021年度: 73,450千円 (直接経費: 56,500千円、間接経費: 16,950千円)
2020年度: 47,060千円 (直接経費: 36,200千円、間接経費: 10,860千円)
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キーワード | 陽子電荷半径 / 低エネルギー電子散乱 / 極低運動量移行 / 電荷形状因子 / 断面積絶対値測定 / 電子弾性散乱 / ローゼンブルース分離 / Rosenbluth 分離 / 電子散乱 / 低運動量移行 / 史上最低ビームエネルギー / 極低運動量移行領域 / 陽子半径パズル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、物質の基本粒子である陽子の大きさの正確な決定です。電子とμ粒子で測定された陽子半径に深刻な不一致が見出され、現代物理学上の大きな問題となっています。不一致は標準理論を超える電子とμ粒子間の相違の可能性を示唆し、また半径の不定さは原子核構造やRydberg定数の不定さに影響するためです。本研究は、従来の研究ではなし得なかった測定上の不定性を極限まで排する測定を実現することで信頼度の高い半径決定を目指します。
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研究実績の概要 |
2022年度は、完成したビームライン輸送系並びに2連高分解能スペクトロメータを利用した本格的な電子・陽子弾性散乱測定を控えて、徹底的なバックグランド(ガンマ線、中性子)対策を行った。焦点面検出器を覆うほぼ1トンの重量を持つ放射線シールドやビームダンプから吹き出してくるガンマ線や中性子から検出器を効率的シールドするための高度化したシールド構造体をシミュレーションによってデザインし建設、実験室に設置した。加えて、半導体検出器からの微小信号に対する電子加速器運転に伴う強烈な電気信号雑音対策も施した。スペクトロメータ内真空槽その上で、さまざまな運動量移行条件のもとでも、実際に電子ビームを水素標的に照射し十分にバックグランドを押さえ込んだ状態で散乱確率の小さな電子・陽子弾性散乱断面積測定を開始することが可能であることを確認した。 並行して共同研究者である米国ハンプトン大の Michael Kohl 教授らの研究グループとの焦点面検出器としての GEM 検出器の共同開発研究も進めた。本研究で博士学位を目指している大学院生とともに、Kohl 教授らの研究グループが開発中の GEM 検出器の進捗状況並びに今後の検出器開発の進め方について打ち合わせを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように本科研費で建設した散乱電子スペクトメータによる発生確率の小さな電子・陽子弾性散乱事象が正しく測定できる放射線シールドを完成させ、バックグランドの寄与が無視でき(10^-3 以下)、想定通りの運動量分解能で本測定が可能であることを確認した。その上で、実際に水素標的(具体的には CH2 標的)を用い、特定の運動量移行での電子・陽子弾性散乱事象測定から、断面積値を含めて正しい測定が行えていることも確認した。電子ビームエネルギー並びに散乱角度を変えて数点の散乱弾面積データを収集し、これらさまざまな運動学条件下でもバックグランドの問題なしに測定できていることを確かめることができ、本格測定開始可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は陽子電荷半径決定に必要な様々な運動学条件(電子ビームエネルギー(10-60MeV)、散乱角度 30-150度))のもとで電子・陽子弾性散乱測定を実施する。17点の運動学移行量の運動学領域で測定を行い、データ解析を進め陽子電荷半径を決定する予定である。 研究を進めている東北大学電子光理学研究センターでは、本研究を当研究センターの最も重要な研究(Flagship実験)と位置付けており、必要な加速器運転時間は問題なく確保できる予定である。予定している運動学領域で必要な精度のデータ収集にはほぼ1年間かかる見込みである。今後は必要な測定を完了させ、データ解析を進め、研究結果を論文として発表する予定である。本測定は日本でのみ実行できる研究のため、本研究の動向については世界的な関心が非常に高い。そのため、研究結果の見通しが立った段階で、仙台で国際会議を開催したいと考えている。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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