研究課題/領域番号 |
20H05654
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分C
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80249937)
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研究分担者 |
津江 光洋 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50227360)
土屋 武司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50358462)
松尾 亜紀子 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70276418)
田口 秀之 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究領域主幹 (90358515)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
195,780千円 (直接経費: 150,600千円、間接経費: 45,180千円)
2024年度: 37,050千円 (直接経費: 28,500千円、間接経費: 8,550千円)
2023年度: 37,960千円 (直接経費: 29,200千円、間接経費: 8,760千円)
2022年度: 39,000千円 (直接経費: 30,000千円、間接経費: 9,000千円)
2021年度: 39,520千円 (直接経費: 30,400千円、間接経費: 9,120千円)
2020年度: 42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
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キーワード | 極超音速機 / 飛行試験 / フライトテストベッド / 機体推進統合制御 / 飛行実験 / HIMICO |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、我が国で先行している極超音速空気吸込みエンジン技術をマッハ5環境下で飛行実証することにより、機体/推進統合制御技術を構築するとともに、希少な極超音速フライトデータを獲得する。その実証実験(名称:HIMICO)を国産S-520観測ロケットを用いて行うことで、国産技術によるフライングテストベッド(FTB)の確立を目指す。本研究は、空力、軌道、熱構造、推進に跨がる学際的テーマを数多く含む大型システムであり、統合制御技術、ロバスト複合最適化技術等の学術的要素を持ち、次世代有人宇宙輸送機の実現を目指す多分野の学生にとっての教育効果も高い。
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研究実績の概要 |
極超音速機の機体/推進統合制御技術の構築と推進風洞実験及び極超音速飛行実験での技術実証に向け、以下の通り研究を進めた。 (1) 飛行安全性の検討として、飛行軌道の解析を実施した。ロケットと分離後の極超音速統合制御実験機(HIMICO)有翼機の軌道を解析し、制御則の解析、モンテカルロ法による落下分散解析を行った。また搭載フライトコントローラの設計を行った。HIMICOの姿勢軌道決定系と飛行安全系の事前確認をするための事前飛行実証(HAOT)ミッションの設計を行なった。(2) 超音速風洞実験により、HIMICOインテークのバズに関する調査を実施した。その結果とCFD解析を組み合わせて、バズモデルの構築に着手した。(3) HIMICOのMach 5極超音速風洞実験によって、高迎角を含む六分力データ、表面流可視化データを取得した。水素ラム燃焼器のマッハ4模擬条件試験において、アブレータによる遮熱効果を評価した。(4) PCTJラム燃焼器で発生する燃焼不安定性に及ぼす未燃ガスと既燃ガスの温度比および水素噴流と主流空気の運動量比の影響を実験で明らかにするとともに、機械学習手法を用いた解析を行うことでその発生メカニズムを調査した。またFTIR計測装置の作動実験を行い、窒素酸化物の検量線を作成した。さらに、ラム燃焼器から排出されるガスのサンプリングを試みるとともに、窒素酸化物濃度を予測するための数値計算手法の構築を実施した。(5)空力加熱を含む熱構造CFDコードを開発し、極超音速風洞実験との比較により解析手法の妥当性を評価した。これによって、機体形状の特徴を加味した熱流速分布が取得可能となり、HIMICO実験機の熱構造解析に必要なデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HIMICOの全機システムについては、安全対策のため、極超音速統合制御実験機の機体構造の設計変更が必要となり、模型の完成時期が若干遅れた。また、予定していた推進風洞実験が、設備側の問題によって延期となったため、全体として遅れが生じている。 一方、燃料供給配管や光学計測系の構築は順調に進んでおり、水素ラム燃焼器のマッハ4模擬条件での燃焼試験を行い、燃料流量と燃焼温度の関係を取得した。推進風洞実験における気流成立性確認のため、サブスケール模型を用いた予備風洞実験を行った。 ラム燃焼器の燃焼不安定性の研究に関しては、順調に進んでおり、様々なパラメータを変化させた実験データを取得し、DMDやクープマン固有値分解手法を用いた解析を実施することにより,熱音響振動が励起されるメカニズムに関する知見を取得するなど、成果を上げている。また、排気ガス中の窒素酸化物濃度をFTIRで計測できることを明らかにしたのち、ラム燃焼器からの排気計測を試みたが、サンプリングプローブが破損したため、プローブの改良ならびにサンプリング手法の見直しを実施している。 熱防護設計についても概ね順調である、熱構造CFDコードを開発し、極超音速風洞実験との比較により解析手法の妥当性を検討・評価し、機体形状の特徴を加味した熱流速分布が取得可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度以降の研究計画において、以下のように取り組む。 (1) HIMICO供試体等の製作と実証実験の準備:2022年度までに機体構造については概ね製作が完了した。機体を完成させるとともに装備品(燃料供給系、計測系、通信装置、演算装置等)を購入(一部製作)し、推進風洞実験と飛行実験に向けた準備を行う。 (2) 極超音速統合制御技術の確立: 安全性に関する検討が完了し、2025年度飛行実験に採択された。今後は、観測ロケットグループと連携して、安全審査、設計審査に挑む、新規開発品である分離機構について、概念設計が完了しており、詳細な検討及び単体実験に着手する。 (3) 学術的基盤技術研究:計画通りに進んでいる。複合領域最適化により、ロバストなシステムを構築することができた。また、エアインテークに関しては、複数の査読論文を含む業績を得た。インテークバズについても物理的メカニズムの解明が進んでおり、今後はCFDを駆使して、バズのモデル化を進める。ラム燃焼器解析も予定通り進行し、FTIRシステムが完成し、計測を行なっていく。極超音速機の熱構造解析においては、精度を高め、実験機の設計に導入する。 (4) HIMICO研究会の実施、宇宙輸送シンポジウム等での企画セッションを開催し、内部連携と外部への情報発信を強める。 構造設計の再検討や物価の高騰によるコスト増及びスケジュールの遅れが発生しているため、計画自体を見直している。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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