研究課題/領域番号 |
20H05655
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分C
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
久保田 均 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 総括研究主幹 (30261605)
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研究分担者 |
野村 光 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 准教授 (20506258)
鈴木 義茂 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (50344437)
礒川 悌次郎 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (70336832)
田丸 慎吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (70773802)
宇田川 将文 学習院大学, 理学部, 教授 (80431790)
谷口 知大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究チーム長 (90635806)
千葉 大地 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (10505241)
薬師寺 啓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究チーム長 (10361172)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
200,850千円 (直接経費: 154,500千円、間接経費: 46,350千円)
2024年度: 27,950千円 (直接経費: 21,500千円、間接経費: 6,450千円)
2023年度: 27,950千円 (直接経費: 21,500千円、間接経費: 6,450千円)
2022年度: 27,950千円 (直接経費: 21,500千円、間接経費: 6,450千円)
2021年度: 27,950千円 (直接経費: 21,500千円、間接経費: 6,450千円)
2020年度: 89,050千円 (直接経費: 68,500千円、間接経費: 20,550千円)
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キーワード | 人工スピンアイス / 強磁性トンネル接合素子 / リザーバ計算 / 強磁性トンネル接合 / 磁性薄膜 / ナチュラルコンピューティング / リザバー計算 / 静磁気的結合 / フラストレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,幾何学的なフラストレーションを有する人工スピンアイスをナチュラルコンピューティングに適用し,人工知能ハードウエアとしての基盤を確立する.人工スピンアイスとは,人工的なサブミクロンサイズの強磁性体を幾何学的に配列したもので,自然界にあるスピンアイスと同様にフラストレーションに基づく豊富なダイナミクスを備えている.本研究では,スピントロニクスの代表的な機能素子である強磁性トンネル接合を用いて人工スピンアイスを作製し、それをリザバー計算に適用する.動作原理を確立し、低消費電力と計算性能の両立を目指す.得られた知見を基に設計ツールを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では人工スピンアイスを物理リザバー計算に適用し、高い計算性能と高集積化の両立に道を開く事を目指している。本年度の研究内容を以下に述べる。 ・人工スピンアイスネットワーク試料の作製と評価 パーマロイ薄膜を用いて、ランダムな迷路構造を有する細線パターンを作製し磁気特性を評価した。人工スピンアイスを構成するセルの磁気特性を実験とシミュレーションにより調べた。長いStadium Shape形では磁気渦がセル端部に生成し、比較的小さな磁界で一斉反転を引き起こすことがわかった。この結果に基づき強磁性トンネル接合からなるハニカム格子人工スピンアイスネットワーク試料を作製した。ピッチサイズを2-1.04ミクロンの範囲で変化させ、72個中の62個のセルに個別に上部電極を接続した。磁気抵抗曲線の測定の結果、磁気抵抗か高くかつ抵抗値のばらつきが少ない良好な磁気抵抗特性を得た。 ・リザバー計算シミュレーション 72個のセルからなるハニカム格子人工スピンアイスネットワーク試料を想定したシミュレーションを行った。磁界パルスの波形が計算性能に大きな影響を与えることがわかった。また、人工スピンアイスのトポロジカルな性質に着目したシミュレーションを行い、計算性能を評価した。 ・リザバー計算実験・解析 ランダムな迷路構造パターンに成形した試料を用いてレザバー計算を行った。磁界印加機構とカー効果顕微鏡システムをソフトウェアにより同期的に制御した。解析の結果、迷路構造パターンの中で磁化方向が大きく変化する部分が非線形演算に大きく寄与することが明らかになった。 ・設計ツール開発 迷路構造を有する複雑な形状からなるリザバーのシミュレートを可能とする拡張を行った。加えて計算ツールを用いたシミュレーションを行いツールのインタフェイスの改良を行った。ツールの普及を助けるより簡便な操作での利用が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、シミュレーションを先行して行い、強磁性単層薄膜での実験で素子作製・リザバー計算の知見を積み、強磁性トンネル接合試料での実証に展開する計画である。今年度は、シミュレーション・理論により磁化ダイナミクスが計算性能に影響を及ぼす事、トポロジカルな性質の活用について理解を深める事ができた。強磁性単層磁性薄膜を用いた試料作製とそれを用いたリザバー計算実験を行い、計算動作を実証するとともに、計算に大きく寄与する構造の特徴を明らかにすることができた。強磁性トンネル接合素子を用いた実験では、セル形状と磁気特性の関係を調べた上で、昨年度までに構築した微細加工プロセスを用いてアレイ状試料を作製した。磁気抵抗効果曲線を測定したところ、磁気抵抗率、抵抗値のばらつき、曲線形状いずれも良好な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーションにより人工スピンアイスリザバーに適したネットワークの構造の探索を引き続きおこなう。その結果を基に強磁性単層磁性薄膜を用いた物理リザバー計算を行い、計算性能向上のための指針を明確にする。これまでのシミュレーション・実験で得られた、より外的擾乱に耐性の強い素子構造をもとに素子の構築を行う。強磁性トンネル接合素子を用いた人工スピンアイス試料の作製も同時に進め、磁気的・電気的特性評価し、リザバーとしての特徴を明らかにする。また、計算に大きく寄与する構造を特定することで、配線の簡略化を行う。これまでに開発したシミュレーターを拡張し設計ツールの開発を進める。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
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