研究課題/領域番号 |
20H05660
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平川 一彦 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10183097)
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研究分担者 |
橋本 克之 東北大学, 理学研究科, 助教 (30451511)
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
芦原 聡 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10302621)
濱田 幾太郎 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80419465)
平山 祥郎 東北大学, 先端スピントロニクス研究開発センター, 総長特命教授 (20393754)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
190,840千円 (直接経費: 146,800千円、間接経費: 44,040千円)
2024年度: 29,640千円 (直接経費: 22,800千円、間接経費: 6,840千円)
2023年度: 31,330千円 (直接経費: 24,100千円、間接経費: 7,230千円)
2022年度: 33,540千円 (直接経費: 25,800千円、間接経費: 7,740千円)
2021年度: 36,660千円 (直接経費: 28,200千円、間接経費: 8,460千円)
2020年度: 59,670千円 (直接経費: 45,900千円、間接経費: 13,770千円)
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キーワード | 単一分子トランジスタ / 量子ナノ構造 / テラヘルツ共振器 / 強結合状態 / 核スピン / 量子ドット / テラヘルツ電磁波 / 超強結合 / ナノギャップ電極 / 量子ポイントコンタクト / 共振器 / 単一電子トンネル / 核磁気共鳴 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、単一分子など極限的に微細な系を活性層とするトランジスタを形成し、その中での電子や分子のダイナミクスを応用して、エレクトロニクスに新しい局面を拓こうとする研究が重要となりつつある。我々は、原子スケールのギャップを有する極微金属電極を用いて、回折限界をはるかに超えて単一分子のテラヘルツ分光を行い、分子の超高速振動や電子状態を明らかにする研究を行ってきた。本研究では、これまでの研究をさらに発展させ、分子振動と電子伝導の強い結合や、フラーレンに内包された水分子の核スピンを量子情報処理への応用に展開し、原子スケールの「テラヘルツナノサイエンス」という新しい分野をさらに推進・深化させる。
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研究実績の概要 |
近年、量子ドット、単一分子など極微ナノ構造を活性層に用いた新規トランジスタの研究が注目されている。特に、単一分子は分子機能を応用できるデバイスとして注目されるとともに、分子振動や核スピンなどが新しい量子情報処理の媒体となる可能性も検討されている。このようなナノ構造中の量子準位や分子振動などの素励起のエネルギーは、おおよそテラヘルツ(THz)電磁波の光子エネルギーに対応するため、THz電磁波との相互作用の研究は、ナノ量子構造の物理の解明やその応用に適していると考えられる。特に、ナノギャップ中のTHz電界は大きく増強されるため、極めて強いTHz交流電界と電子系の相互作用という非常に興味深い状況も作り出せることもわかってきた。ちょうど今、THz電磁波と極微ナノ構造の相互作用の研究は新しいフェーズに入ったと言えよう。 上記のような背景の下、現在立ち上がりつつある原子スケールの「テラヘルツナノサイエンス」という新しい分野をさらに推進・深化させ、応用への展開可能性を探ることを本研究の目的とする。本年度は、特に、単一の水分子を内包したフラーレン分子(H2O@C60)を活性層とする単一分子トランジスタのコンダクタンの磁場依存性を測定し、低磁場領域ででクーロンピークのコンダクタンスがヒステリシスを示すことや分裂を起こすことを見出し、その起源を検討している。また分子一個の電子スピン共鳴の測定に成功した。さらに、半導体量子ドットや量子ポイントコンタクトとsplit ring resonator (SRR)と呼ばれるTHz共振器との結合系において、電子系とTHz共振器系の超強結合を観測するとともに、同じ実験条件で外部からTHz電磁波を照射しなくてもコンダクタンスに変化が現れ、真空場揺らぎによると思われるコンダクタンス変化を観測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、単一H2O@C60分子トランジスタにバイアス電圧を印加すると、トンネル電子の注入により、単一水分子の回転励起が誘起されること、その周波数がパラ状態とオルソ状態で異なること、さらにパラ・オルソ状態が高速に揺らぐことを見出した。本年度は、単一H2O@C60分子トランジスタのクーロンピークのコンダクタンスに注目して検討を行い、2 T以下の磁場領域で顕著なヒステリシスを示すことを見出した。単一H2O@C60分子トランジスタには磁性元素は入っていないため、観測されたヒステリシスは水分子中の水素原子の核スピンの情報を反映している可能性があり、起源を明らかにするとともに、量子情報技術への応用の可能性を検討している。分子トランジスタの抵抗測定により単一水素原子のNMRを測定する試みは、マンパワーの制約により進んでいない。 さらに、半導体ヘテロ構造に超微細加工を行って実現できる量子ドット/量子ポイントコンタクトとスプリットリング共振器(split-ring resonator; SRR)と呼ばれる微小なTHz共振器との超強結合の実現に取り組んでいる。我々は、電界が集中するSRRのギャップ近傍に量子ドット/ポイントコンタクトを配置した構造に注目し、量子ドット内の電子遷移エネルギーがSRRの共振周波数と一致する付近で非常に大きな反交差が観測されることがわかった。この反交差から、少数の電子でも超強結合が実現できることが明らかになった。さらに、超強結合が観測される同じ磁場、バイアス条件で、THz照射を切った状態でコンダクタンスを測定したところ、コンダクタンスの変化が観測された。これは電子系と共振器系の超強結合による真空場揺らぎと電子系の相互作用によるものと思われ、量子情報技術への展開の基礎となるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き単一分子トランジスタの量子伝導と分子振動や核スピンの検出と応用に関する研究を継続する。特に、昨年度観測に成功したH2O@C60分子におけるパラ/オルソ水分子の量子回転励起についてさらに検討を進める。極低温、無磁場状態では、パラ水分子が基底状態であることが知られているが、強磁場を印加すると核スピンがそろったオルソ状態に基底準位が入れ替わることが予想される。今後も、強磁場を印加しつつ、磁気抵抗やTHz励起光電流測定により、水素原子1個の核スピンの検出に取り組む。また、単一分子トランジスタの電極を強磁性体に置き換えた場合の物理についても検討を進める。 また、半導体ヘテロ構造に微細加工を施して実現できる量子ドットとTHz共振器の実験を継続して行う。高移動度半導体ヘテロ構造に超微細加工を行って実現できる量子ドットとスプリットリング共振器(split-ring resonator; SRR)と呼ばれる微小なTHz共振器との超強結合が実現できると、量子ドット内の量子情報を電磁波という形で遠方に伝送することができ、空間的に離れた量子ドット間の量子相関を実現できる。昨年度、量子ドット電子系とSRR THz共振器系の超強結合を実現することに成功したので、今後、SRRによりマクロな距離離れている量子ドット間の量子相関の実現に取り組む。特に、SRRを並べた構造については、放射ロスを低減できるようにトポロジカルな効果を利用できないか検討を行う。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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