研究課題/領域番号 |
20H05666
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 義茂 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (50344437)
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研究分担者 |
内海 裕洋 三重大学, 工学研究科, 准教授 (10415094)
野崎 隆行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究チーム長 (60452405)
後藤 穣 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (80755679)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
191,620千円 (直接経費: 147,400千円、間接経費: 44,220千円)
2024年度: 22,750千円 (直接経費: 17,500千円、間接経費: 5,250千円)
2023年度: 33,930千円 (直接経費: 26,100千円、間接経費: 7,830千円)
2022年度: 35,620千円 (直接経費: 27,400千円、間接経費: 8,220千円)
2021年度: 35,620千円 (直接経費: 27,400千円、間接経費: 8,220千円)
2020年度: 63,700千円 (直接経費: 49,000千円、間接経費: 14,700千円)
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キーワード | spintronics / skyrmion / thermodynamics / information / スピントロニクス / 磁気スキルミオン / 情報熱力学 / ブラウニアン計算 / Information |
研究開始時の研究の概要 |
電子の磁石としての性質であるスピンの流れを制御することにより有用な電子デバイスを実現してきたスピントロニクスの分野に「情報流」の概念を導入する。このことにより、ナノサイズの磁石とその複合系における情報熱力学の学理を構築する。得られた知見は省エネルギーで知的な情報デバイス・システムを構築するための基礎となる。具体的には磁気スキルミオンと呼ばれる磁石の中に発生するナノサイズの粒子の熱運動を利用した情報熱機関を実現する。さらに、これらの応用として超低消費エネルギースピントロニクス計算機の動作を実証する。
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研究実績の概要 |
電子の磁石としての性質であるスピンの流れを制御することにより有用な電子デバイスを実現してきたスピントロニクスの分野に「情報流」の概念を導入し、ナノサイズの磁石とその複合系における情報熱力学の学理を構築することを目的として研究を開始した。 情報流の評価には非常に多くの測定サンプリング数を必要とすることからシミュレーションによる解析を可能とするためにスキルミオンを粒子と見立てた力学モデルに立脚したシミュレーターを作成した。そのシミュレーターを用いて情報流を評価することにより情報の伝達に必要な時間はスキルミオンの拡散時間にほぼ等しいことを見出した。一方、実験結果の情報流解析からはスキルミオンの運動が非マルコフ的であることを見出した。これは、素子内に複数のトラップサイトがあるために系が隠れマルコフシステムになっているからであると考えられた。 集束イオンビーム加工によりスキルミオンに対する調和ポテンシャルを作ることを試みたがスキルミオンをうまくトラップすることができなかった。引き続き条件の最適化を行う。 電圧ゲートの端にスキルミオンがトラップされてしまう問題を解決するためにSiO2層を厚膜化した。その結果、ゲートの下をスキルミオンが通り抜けるようになった。そこで、電圧効果により動作するp-bitを設計した。また、回路中の複数のスキルミオンをリアルタイムで検出しフィードバックするために磁気光学顕微鏡をPXIシステム(FPGA)で制御可能にした。磁気キャパシタンス効果について引き続き研究したが効果が得られなかった。ブラウニアン計算の電力消費についてアニール効果も考慮に入れた動作についての検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電圧ゲートによるスキルミオンの制御に成功したことは大きな飛躍といえる。このことにより電圧効果とスキルミオン間相互作用を用いた効率的な情報熱機関が設計可能となった。シミュレーションと実験の連携も効率的に運用できている。さらに、高速度カメラの導入によりスキルミオンの運動をほぼ連続的にとらえることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
電圧ゲートによるスキルミオンの制御に成功したので、今後は実際に動作する自律型のMaxwellの悪魔を作ることが重要である。また、これまでにスキルミオン間情報流の評価に成功し、さらに、高速度カメラの導入によりスキルミオンの運動をほぼ連続的にとらえることができるようになった。このことから、一旦あきらめたスキルミオン冷凍機の実現について再検討する。すなわち、温度の変化を温度計で測定するのではなくスキルミオンの振動から評価することが可能になったと考えられる。このことにより、スキルミオンの情報熱力学的な運動を直接とらえることが次の目的となる。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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