研究課題/領域番号 |
20H05669
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設) |
研究代表者 |
根本 知己 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 教授 (50291084)
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研究分担者 |
榎木 亮介 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 准教授 (00528341)
大友 康平 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40547204)
石井 宏和 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 助教 (70743409)
高橋 泰伽 東京理科大学, 先進工学部機能デザイン工学科, 助教 (80968248)
小澤 祐市 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (90509126)
横山 弘之 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (60344727)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
199,940千円 (直接経費: 153,800千円、間接経費: 46,140千円)
2024年度: 28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
2023年度: 28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
2022年度: 28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
2021年度: 33,800千円 (直接経費: 26,000千円、間接経費: 7,800千円)
2020年度: 79,170千円 (直接経費: 60,900千円、間接経費: 18,270千円)
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キーワード | バイオイメージング / 光脳科学 / 神経生理学 / 応用光学 / 高機能レーザー / 非線形光学 / 神経科学 / 半導体レーザー / 量子効果 / Ca2+シグナル / 脳神経科学 / 生物物理学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、光技術と神経科学が融合した新しい学際的な領域「ニューロフォトニクス」を確立する。具体的には、生体中のありのままの状態で神経活動やそれに関わる生体分子のダイナミクスを可視化し、定量的な解析を可能とすることを目標とする。特に、生きたままのマウスの臓器の広範囲の領域で、開口放出などの細胞の微細な形態変化やCa2+ 濃度上昇を観察する新規方法論、神経の活動電位の伝搬と関連する集合解離を高精度・高速で可視化する新手法を実現する。最終的には、確立する革新的なニューロフォトニクスの技術により、新しい疾患の診断法・治療法の確立への橋頭堡を築くことで、国民の健康と福祉に寄与せんとするものである。
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研究実績の概要 |
今年度はサブナノ秒光パルスによるスーパーコンティニュウム光発生に基づき、電気的に周波数やタイミング制御可能なSTED用パルス光源を開発、導入した。また、この導入光源を用いてSTED効率を指標にして蛍光分子のスクリーニングを実施した。レーザー波面操作によりドーナッツ状のビーム計上を発生させ、超解像イメージングが可能であることを確認した。また、新規材料を新たに用いることで、頭蓋骨に観察窓を作成するオープンスカル法での、著しい性能の改善が示唆された。一方で、in vivoイメージングにおいても画像処理を用いた技術を援用することが有効であり発展させた。前年度までに開発した光ニードル顕微鏡法について、製作デバイスによる光ニードル生成原理を精査し、これが光学ファントム計測結果と一致することを確認した。さらに、固定脳組織標本、急性脳スライス標本を用いた実証実験を実施し、200 μm厚の標本中の神経細胞群を単回走査で一挙可視化することに成功した。一連の成果をまとめた原著論文をSci. Rep. 誌に投稿し、受理された (Chang et al., Sci. Rep. 2022)。また、GFPの2光子励起用の光源開発研究を重点的に進めた。具体的には、光増幅が可能な910nm帯と980nm帯に注目して、これらの波長帯の半導体レーザー(LD)の強い利得スイッチング動作によるピコ秒時間幅の光パルスを発生させ、その動作特性を詳細に調べた。また、発生した光パルスを光ファイバ増幅器により増幅して超100Wまでの高ピークパワー化を図った。特に980nm帯に関しては、LDから発生した光パルスの分散補償を行うことで、時間幅を1/2に圧縮することができた。また、強パルス励起下では半導体量子井戸LDが第2量子準位で発振し、単峰で裾のない理想的な光パルスを生成できることを見出して、その詳細特性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アデノ随伴ウィルスによる感染を用い、DREDD(Designer Receptor Exclusively Activated by Designer Drugs)法より神経活動の人工的な操作、及び、in vivoCa2+イメージングを同時に実施することが可能なモデルマウスの系を確立した。この際、ソマトスタチン発現介在ニューロン(SOMニューロン)のみで、クロザピンN-オキシド投与により細胞内Gqシグナル経路を活性化させIP3受容体からのCa2+ストアから細胞内へのCa2+放出を人工的に誘導可能とした。そこで、本研究課題で研究開発してきた二光子光ニードル顕微鏡を用いた高速かつ立体的なイメージング法を適用し、in vivoCa2+イメージングを実施した。その結果、大脳皮質内で立体的に分布する複数個のSOMニューロンの応答を同時に高い時間分解能で可視化することができ、そのCa2+応答には多様性があることが示唆された。これは知る限り世界初の観察例である。また、強励起の量子井戸半導体レーザーで、第2量子準位の発振とその特異な動作特性を新たに見出して、高機能光源への応用可能性を示すことができた。この成果は新しい半導体レーザーの発振様式の研究開発に展開されていく可能性が極めて高く、物理的、量子的原理についても学術的に波及効果があると考えられる。以上のように脳神経科学領域にも、応用物理学やレーザー光学の専門領域においても予想を超えた新しい知見や成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの成果に基づき、二光子ナノスコープによる神経のin vivoイメージング法の高度化を図る。オープンスカル法において著しい性能の改善の方向性が見えてきた。そこで次年度は、極めて広大な観察窓を作成し、安定性や侵襲性、炎症などの生体の応用の懸念される問題に取り組む。数ヶ月に渡る長期的な安定したin vivoイメージング法の検討を実施する。この際には、マウス生体脳において神経活動の二光子in vivo イメージングを実施し評価を行うが、特に画像処理を用いた技術が有効であることが判明したので、それを援用する。また、今年度までに本研究課題で研究開発を実施してきた二光子光ニードル顕微鏡などの新規イメージング手法を、様々な脳神経生理学的な事象に応用することを検討する。これに関連して、固定脳標本の体積イメージングについても新たな手法の援用の検討を新たに開始する。 また、今年度に新開発のSTED用レーザー光源の導入・設置を完了したので、次年度は導入光学系の最適化を図る。特に、補償光学の技術の導入により新規対物レンズや励起波長の長波長化に伴う空間分解能の劣化を波面操作により抑制する。また3次元的な超解像イメージングについては、今年度はSTEDレーザー光を球殻状パターンに変換することに成功したので、新規倒立型2光子顕微鏡と組み合わせ、空間分解能や侵襲性等の評価を実施する。一方、このレーザーの惹起するSTED効果は特に赤色系蛍光タンパク質に対してより有効的に発揮する可能性が新たに示唆された。そこで、RFP等の比較的長波長の蛍光分子をターゲットにした2光子超解像イメージングを実現するためにレーザー顕微鏡の研究開発を推進する。なお、継続して、GFP、YFP等の主要な蛍光タンパク質の二光子励起に対応できるように完成度を高めていく。また3光子励起過程の援用の可能性についても、さらに検討を深める。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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