研究課題/領域番号 |
20H05673
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分E
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 淳夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30359690)
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研究分担者 |
北田 敦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30636254)
竹中 規雄 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (00626525)
コ ソンジェ 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90910282)
西村 真一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 主任研究員 (00549264)
中井 浩巳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00243056)
大谷 実 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (50334040)
大久保 將史 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20453673)
山田 裕貴 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (30598488)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
196,430千円 (直接経費: 151,100千円、間接経費: 45,330千円)
2024年度: 36,660千円 (直接経費: 28,200千円、間接経費: 8,460千円)
2023年度: 42,510千円 (直接経費: 32,700千円、間接経費: 9,810千円)
2022年度: 44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2021年度: 34,710千円 (直接経費: 26,700千円、間接経費: 8,010千円)
2020年度: 38,090千円 (直接経費: 29,300千円、間接経費: 8,790千円)
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キーワード | 孤立軌道 / 孤立分子 / 蓄電池 / 電気化学反応 / 分子動力学計算 / 酸素レドックス / 酸素ラジカル / 酸素二量体 / 遷移金属移動 / 液相マーデルングポテンシャル / デバイ・ヒュッケル理論 / 電極電位 / 静電相互作用 / 電気化学機能 |
研究開始時の研究の概要 |
通常、液体や固体の性質はこれらを構成する分子間・電子間の相互作用によって発現する。最近の研究で、周囲との相互作用から隔絶された分子や電子を大量に導入することが可能で、これらが非常に特異な性質を示すことや、場合によっては電気を蓄える機能を大幅に改善することが明らかになった。本研究では、この新しい現象に着目し、孤立した分子や電子の性質を積極的に制御・活用することで新材料を開発し、蓄電デバイスの飛躍的機能向上を目指す。仕組みの解明には分子や電子の状態を正確にシミュレーションする最先端技術を適用し、材料開発に活かす。
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研究実績の概要 |
蓄電池により多くの電荷を貯蔵するためには、電極材料中のできるだけ多くの構成元素への電子の出し入れを利用する必要がある。 一般に利用される遷移金属の3d軌道への電子授受に加え、孤立した酸素2p軌道への電子の出し入れを利用するこれまでの研究では、まず充電による遷移金属イオンのサイト移動により特殊な酸素の二量化が誘引され、サイト移動した遷移金属イオンそのものが電圧降下を引き起こす主原因とされてきた。 本研究では、Li1.2-xNi0.13Co0.13Mn0.54O2を対象に、リチウムを引く抜く過程で想定される様々な状態に対する安定性を緻密に評価し、相対比較を行った。その結果、電圧降下の引き金となるのは、実は遷移金属イオンのサイト移動ではなく、酸素の二量化であることが判明した。遷移金属イオンの移動は、酸素の二量化による構造変化が引きおこす副次的な現象であり、電圧降下よりもむしろ容量低下の主原因になっている事が解った。 具体的には、x<0.63では酸素ラジカル、x>0.63では酸素二量体が優先的に生成し、これに誘引される形で遅れて遷移金属の移動が起こる。このように、電極中の孤立酸素2p軌道から電子を引き抜く際に誘引される逐次相転移現象に対する従来の定説が明確に否定され、正しい描像が与えられた。 以上の成果により、電極材料への電荷貯蔵量の限界突破に向けては、これまで最重要とされてきた遷移金属の移動の抑制ではなく、より根本的な劣化の引き金となる酸素の二量化を優先的に抑制する材料設計が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電極材料の大幅な活性向上に向けて、重要な研究対象に位置づけている固体内酸素イオンの局在2p軌道への電子授受反応に対し、従来の定説を多角的に否定し、正しい逐次相転移現象の描像を与えたことは、材料設計の前提に対する根本的な見直しを迫る基幹的成果に位置付けられる。
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今後の研究の推進方策 |
蓄電池応用における酸素イオンの孤立2p軌道を利用する施策には明確な限界があり、固体そのものの修飾戦略には限界がある。酸素ラジカル生成に留め、それ以上の酸化を起こさない充電条件の注意深い設定が必要である。同時に、酸素ラジカルについても酸化活性が高いため、電解液サイドからの安定化施策も不可欠となる。性能限界の限界の現実を認識しつつ、その限界を安定に引き出すための総合的検討を行う。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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