研究課題/領域番号 |
20H05680
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分F
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堤 伸浩 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00202185)
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研究分担者 |
有村 慎一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00396938)
風間 智彦 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30431464)
高梨 秀樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (60707149)
寺地 徹 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (90202192)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
198,380千円 (直接経費: 152,600千円、間接経費: 45,780千円)
2024年度: 24,700千円 (直接経費: 19,000千円、間接経費: 5,700千円)
2023年度: 28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
2022年度: 30,030千円 (直接経費: 23,100千円、間接経費: 6,930千円)
2021年度: 52,390千円 (直接経費: 40,300千円、間接経費: 12,090千円)
2020年度: 62,270千円 (直接経費: 47,900千円、間接経費: 14,370千円)
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キーワード | ミトコンドリア / ゲノム編集 / ミトコンドリアゲノム育種 / 植物ミトコンドリア / 品種改良 / 細胞質雄性不稔 / ミトコンドリアゲノム / ミトコンドリアゲノム編集 / オルガネラゲノム編集 |
研究開始時の研究の概要 |
植物ミトコンドリア (mt) ゲノムはエネルギー生産に必須の遺伝子や重要農業形質 の原因遺伝子等をコードしているため, 基礎科学的にも農業生産的にも重要な研究と改変の対象であるにもかかわらず, これまでゲノム改変技術が不在であったため, 手つかずの最後のゲノムとしてとり残されていた. 本研究では, 我々のグループが近年開発した植物mtゲノム改変技術を活用し, mtゲノム遺伝の基礎的性質を明らかにし, またmtゲノム改変集団を通じて育種応用の潜在性検証と重要農業形質に関与する遺伝子の同定を行い, 世界に先駆けてmtゲノム育種基盤の開拓を目指す.
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研究実績の概要 |
植物ミトコンドリアゲノム編集技術を応用した技術,ランダム変異創出技術の開発が進展している.開発した前者技術および葉緑体ゲノム編集酵素のベクターは共同研究依頼が国内外からありこれに対応供給するなど波及貢献に繋がっている.ランダム変異集団の分子遺伝学的解析を引き続き行う.イネWA型CMS原因遺伝子と考えられてきたorf352をmitoTALENによって破壊したところ、花粉の発達は回復するが自殖による種子稔性の回復までは観察されなかった.このことは、orf352の他に原因となる遺伝子が存在している可能性を示唆している.このため、新たな原因遺伝子を探索するために、大規模なゲノム再構成が引き起こされるmitoTALENではなく、一塩基の置換を引き起こす2種類のmitoTALECDを用いてorf352の機能抑制をする植物の作出を試みた.再分化植物120個体を得たが、遺伝子導入が起こっていたのは20個体であった。塩基置換が起こっている個体はいまだに得られていない。現在、培養条件を変更して遺伝子導入植物の作出を引き続き行なっている。また、mitoTALENでorf352の破壊が行われた個体を用いて、実験も行なっていく予定である。ナスCMSについて当初、TALENによる遺伝子切断を試みたが、orf218の近傍に必須遺伝子があるためゲノム編集個体を得られないと考えた。2022年からTALECDによる一塩基置換によるノックアウトを試み,選抜培養した1個体において、orf218領域に塩基置換が生じ開始コドン消失が見られた。この個体の花粉を観察したところ花粉が生じていた。花は形態異常を示すものが多く、特に葯はすべて花弁化していた。葯は裂開しないが人工的に花粉を取り出して自殖、または不稔系統の雌ずいに受粉すると、種子ができたことから、orf218ノックアウト個体の花粉は稔性をもつことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
中間報告時に,ゲノム編集技術の標的一塩基置換技術の開発に成功したのち,葉緑体,核,ミトコンドリアの全ゲノムに対象を広げ,またその効率や精度を上げることに成功し,それを元に国際的な共同研究も広がっているため.
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今後の研究の推進方策 |
植物ミトコンドリアゲノム編集技術は技術そのものの発展を引き続き行い,それを用いた本基盤研究SのCMS解析研究を引き続き行う.ランダム編集技術も技術開発を進めており,その遺伝学的な効果を検証しながら,最終年度での確率を目指す.技術を磨くとともに実際の植物ミトコンドリアゲノム原因変異体を選抜し原因遺伝子変異の同定などのデモンストレーションも行う.細胞質雄性不稔系統の分子解析については,ナスはさらなる解析と論文化を目指す.小麦はゲノム編集そのものの可否を引き続き検討する.イネについては培養条件を変更して遺伝子導入植物の作出を引き続き行なっている。また、mitoTALENでorf352の破壊が行われた個体を用いて、実験も行なっていく予定である。ナスには、本研究で用いた花粉形成不全型CMSとは別に葯裂開不全型CMSが存在する。このCMSは葯内に稔性をもつ花粉が形成されるものの、葯裂開が生じず不稔となる(Khan and Isshiki 2016)。原因遺伝子は、atp1上流に存在するorf312であることが示唆されている(Yoshimi et al., 2013)。本実験方法と同様の手法を用いて、orf312ノックアウトラインの作出を目指す。本実験で得られた個体を花粉親とし、雄性不稔系統に交配したところ、後代では導入遺伝子を持っていてもミトコンドリアゲノム編集が生じていなかった。このことは、通常の生殖過程においては種子親のミトコンドリアゲノムが強固に維持されることを示唆する。一方で形質転換実験ではミトコンドリアゲノム編集が生じている。つまり再分化過程ではミトコンドリアゲノム維持システムが緩む可能性がある。この実験系をモデルとして、どういった場合にミトコンドリアゲノムが改変されやすくなるのか調査を行う。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
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