研究課題/領域番号 |
20H05682
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分F
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朝長 啓造 京都大学, 医生物学研究所, 教授 (10301920)
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研究分担者 |
Parrish Nicholas 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 理研白眉研究チームリーダー (40833851)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
191,360千円 (直接経費: 147,200千円、間接経費: 44,160千円)
2024年度: 37,180千円 (直接経費: 28,600千円、間接経費: 8,580千円)
2023年度: 37,960千円 (直接経費: 29,200千円、間接経費: 8,760千円)
2022年度: 37,180千円 (直接経費: 28,600千円、間接経費: 8,580千円)
2021年度: 37,960千円 (直接経費: 29,200千円、間接経費: 8,760千円)
2020年度: 41,080千円 (直接経費: 31,600千円、間接経費: 9,480千円)
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キーワード | 内在性ウイルス / ボルナウイルス / ゲノム免疫 / 共進化 / ゲノム多様性 / ウイルス免疫 / 内在性RNAウイルス / 抗ウイルス作用 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者は、多くの哺乳動物のゲノムに、レトロウイルスとは異なるRNAウイルスに由来する遺伝配列(内在性ウイルス)が存在していることを発見し、これらが抗ウイルス活性を示すことを明らかにしてきた。本研究は、内在性ウイルスが持つ「ゲノム免疫」の動作原理を解明し、それを利用することで、新たなバイオテクノロジーの創出を目的としている。本研究は、哺乳動物におけるCRISPR/Cas様機構の同定と応用を目指すものであり、その成果は、これまでにない抗ウイルス薬やワクチンの開発につながる。本研究は、世界に先駆けて内在性ウイルスの機能性を確保するものであり、わが国の科学技術イノベーションの発展に大きく貢献する。
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研究実績の概要 |
本年度は、前年度に引き続き、piRNAを発現する内在性ボルナウイルスの抗ウイルス活性を明らかにする目的で、マウスゲノムに存在するpiRNAを発現する3か所のmmEBLNsをノックアウトしたEBLN-KOマウスへの組換えBoDV-1の感染実験を実施した。また、EBLN-KOマウスのpiRNAクラスター領域にBoDV-1のヌクレオプロテイン(N)配列を挿入し、BoDV-1のN mRNAに相補的に結合するpiRNAsを発現するノックインマウス(EBLN-NKI)の作成を行った。さらに、生殖細胞でのmmEBLNsの機能を追究するために、生体を用いた精巣組織へのウイルス感染実験を試みるとともに、成マウスの精細管へのウイルス接種の効率的な方法を検討し、実体顕微鏡下での接種手法を確立した。さらに、幼マウスの精巣3次元培養へのウイルス感染技術も取得した。これらにより、精巣内で高い発現が見られる内在性ボルナウイルス由来のpiRNAsの生体内でのウイルス感染への詳細な役割を今後追究する予定である。また本年度は、内在性ボルナウイルス発現の細胞機能への影響を探るために、ヒト由来内在性ボルナウイルスEBLN-1による宿主遺伝子の発現摂動をRNA-seq解析により検討した。その結果、EBLN1タンパク質もしくはRNAが、細胞の分化・発生経路に関連する宿主因子の発現異常を誘導するとともに、293T細胞においてRNAサイレンシングを抑制する因子として機能することが示された。これらの結果は、ヒト細胞において、EBLN1が宿主のRNAiシステムを阻害することによって、細胞の分化や発生に影響を及ぼす可能性を示唆した。さらに、ヒトゲノムに存在するhsEBLN-3の宿主での適応進化を探るために、hsEBLN-3の配列に存在する機能ドメインやその他の配列の保存性と変異蓄積に関するゲノム進化的解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ノックアウトマウスやノックインマウスの作製など生体内での解析、そして精巣の3次元培養など生体材料をこれまで以上に進めた。実験動物や生体材料を用いた解析は時間がかかるとともに、実験結果も安定しないことが多いが、ウイルス感染実験に関しては安定した結果が出せるようになってきた。その意味でも、計画はおおむね順調に進展していると考えている。論文としての発表も準備が進んでおり、最終年度に向けて成果の獲得に進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終目標である「RNA配列の改変による抗ウイルス活性の制御」に向けて、piRNAクラスターにBoDV-1のヌクレオプロテイン遺伝子配列を組み込んだノックインマウスを用いたウイルス感染実験を実施する。ウイルス感染を抑制できる配列を明らかにすることで、人工的な抗ウイルス活性の制御を試みる。具体的には、EBLN-KOノックアウトマウスとBoDV-1-N ノックインマウスでのウイルス感染効率の比較を、生体や3次元培養を用いた精巣への感染実験にて抗ウイルス活性の強度を明らかにし、配列特異性とを明らかにする。また、細胞内で機能を獲得した内在性ボルナウイルス配列の宿主への適応機構を探るために、内在性ボルナウイルス由来産物の培養細胞内での宿主因子やRNAとの相互作用を網羅的に理解する実験を進める。これまでの成果をもとに、内在性ボルナウイルスの遺伝子産物の発現による細胞機能への影響をオーム解析により明らかにする。成果獲得に向けて論文の執筆を精力的に進める。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
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