研究課題/領域番号 |
20H05691
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分H
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 誠 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (60276607)
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研究分担者 |
山本 圭 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (30304504)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
196,690千円 (直接経費: 151,300千円、間接経費: 45,390千円)
2024年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2023年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2022年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2021年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2020年度: 42,250千円 (直接経費: 32,500千円、間接経費: 9,750千円)
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キーワード | 脂質 / 酵素 / 生体分子 / 細胞・組織 / 遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
脂質は核酸・タンパク質・糖質と並ぶ根源的生体物質であり、その代謝系の破綻は多岐に渡る疾患と関連する。申請者はこれまでに、脂質代謝の鍵酵素ホスホリパーゼA2(PLA2)分子群を中心とした脂質生物学研究を展開し、各種PLA2により始動する疾患固有の新しい脂質代謝経路(PLA2脂質経路)の同定を通じて、当該研究領域を牽引してきた。本研究では、PLA2分子群の遺伝子改変マウスの網羅展開とメタボローム解析を軸とした従来の研究路線を更に発展させるとともに、将来の臨床導出を視野にヒト検体を用いた外挿研究を加速し、生命応答におけるPLA2脂質経路の役割を総合的に体系化することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者が世界に誇るPLA2分子群の遺伝子改変マウス群にリピドミクスを展開し、各酵素が関わる疾患における責任脂質を同定するとともに、ヒト疾患との相関性を検証する。更に分子・細胞レベルでの各酵素の機能や調節機構と照合することで、PLA2分子群を起点とした疾患固有の脂質代謝マップの総合的体系化を目指す。 1. 皮膚バリアの恒常性と疾患に関わる新規脂質経路:(1)PLA2G3はPGE2、PGF2aの産生を介して表皮バリアの恒常性に関わり、その欠損はアトピー性皮膚炎と喘息(アレルギーマーチ)の増悪を引き起こすこと、(2)PLA2G2Fの二次産物であるA-LPEは皮膚創傷治癒を促進すること、 (3) PLA2G4Eは皮膚、筋肉、胃、虚血脳において抗炎症性脂質NAEの産生に関わること、(4)強皮症において発現が低下するABHD12Bの欠損マウスは皮膚線維化が亢進すること、等を発見した。 2. アレルギー疾患と関連するPLA2脂質経路:マスト細胞のPLA2G3が線維芽細胞のLPA1受容体を介してマスト細胞の成熟を、線維芽細胞のPLA2G12Aがマスト細胞の活性化を促進することを見出し、その分子機構を解明した。 3. 代謝・循環器疾患と関連するPLA2脂質経路:脂肪細胞ベージュ化に伴い発現誘導されるPLA2G2Eの欠損マウスでは熱産生が低下することを見出した。 4. PLA2の新しい動作原理の解明:小腸のPLA2G2Aが腸内細菌叢の変容を介して二次的に免疫や代謝に影響を及ぼすこと、リンパ腫組織に誘導されるPLA2G10が細胞外小胞の修飾を介してリンパ腫増悪に関わることを論文発表した。さらに、肝臓においてPNPLA7とPNPLA8によりリン脂質から動員されたコリンのメチル基がメチオニン代謝を通じてエピゲノム調節に利用されることを論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの世界的流行により、マウス飼育の制限、職員学生の入室制限、世界的な物流の停滞による試薬・器具・マウス等の入手遅延が重なり、研究費の一部を次年度に繰り越すことを余儀なくされたが、最終的にPLA2G2Aによる腸内細菌叢の制御、PLA2G10による細胞外小胞の修飾、PLA2G4EによるNAEの産生、PNPLA7/PNPLA8によるコリン・メチオニン代謝の制御など、いくつかの研究成果を論文にまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 皮膚疾患と関連するPLA2脂質経路:前年度までの成果を継続展開するとともに、皮膚に固有に発現しているPLA2G4D、PLA2G4F、ABHD12Bの各欠損マウスの皮膚表現型の解析を実施する。ヒト皮膚疾患における各酵素の発現プロファイルを元に、PLA2G4Dについては乾癬、PLA2G4Fについては表皮修復、ABHD12Bについては強皮症に着目する。各欠損マウスの皮膚リピドミクスならびにリコンビナント酵素を用いた酵素活性評価系を展開し、各酵素が関わる脂質代謝を同定する。さらに、分担研究者と協力し、PLA2G2Fの二次産物A-LPEの生物活性の解明ならびに簡易検出法の開発を進める。 2. アレルギー疾患と関連するPLA2脂質経路:これまでの解析を継続し、マスト細胞のPLA2G3と線維芽細胞のLPA1受容体によるマスト細胞の成熟促進機構、線維芽細胞のPLA2G12Aによるマスト細胞の活性化増強機構を解明する。マスト細胞に加えて、PLA2G3欠損マウスでは好塩基球と好酸球、PLA2G12A欠損マウスではTh17細胞が乱れることを見出しており、それぞれの作用機序を解明する。 3. 代謝・循環器疾患と関連するPLA2脂質経路: 脂肪細胞ベージュ化に伴い発現誘導されるPLA2G2Eの機能を明らかにするとともに、動脈硬化で誘導されるPLA2G3と病態の関わりを明らかにする。 4. PLA2の新しい動作原理の解明:sPLA2による腸内細菌叢の変容ならびに細胞外小胞の修飾について、現象の普遍化を目指す。更に、リゾホスホリパーゼPNPLA6, PNPLA7の組織特異的欠損マウスを用い、肝臓、筋肉、神経、網膜等における各酵素の役割を明らかにする。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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