研究課題/領域番号 |
20H05693
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分H
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
審良 静男 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任教授(常勤) (50192919)
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研究分担者 |
前田 和彦 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (20332869)
シン シャイレンドラ・クマール 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任研究員(常勤) (10792187)
田中 宏樹 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任講師(常勤) (50747920)
國吉 佳奈子 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (70747881)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
198,120千円 (直接経費: 152,400千円、間接経費: 45,720千円)
2024年度: 28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
2023年度: 28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
2022年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2021年度: 43,420千円 (直接経費: 33,400千円、間接経費: 10,020千円)
2020年度: 58,110千円 (直接経費: 44,700千円、間接経費: 13,410千円)
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キーワード | Regnase-1 / mRNA安定 / 代謝調節 / 組織恒常性 / mRNA産生制御 / mRNA安定性 |
研究開始時の研究の概要 |
mRNA分解酵素Regnase-1は自身のエンドリボヌクレアーゼ活性により多くの炎症・免疫応答に関わるmRNAの産生を制御し、炎症・免疫応答の制御において必須の分子である。一方でRegnase-1はmTORのような代謝経路を制御する遺伝子の機能制御に関わっており、Regnase-1が炎症・免疫応答以外の様々な代謝過程の制御にも関与していることが明らかになりつつある。本研究では、各種組織特異的ノックアウトやノックインマウス、さらにHITS-CLIP法によるターゲットmRNA同定を用いて、様々な生体応答におけるRegnase-1の機能的役割の全貌を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
Reganse-1の機能によって著しく影響を及ぼす細胞集団に着目し、それらが既存信号伝達経路とどのように交差しているのかについて生体モデルマウスを導入して検証を進めている。NK細胞特異的Regnase-1欠損マウスのNK細胞では、CXCR6陽性NK細胞が増加し抗腫瘍活性と腫瘍への浸潤を増強していること、その仕組みとしてIfngプロモーターにOCT2/IκBζ複合体形成が促され転写促進することを明らかとした。Regnase-1のヌクレアーゼ活性欠損D141N変異マウスでは、セリンスレオニンキナーゼPim2が標的遺伝子として作用し、CD4+ T細胞を介した肺肉芽腫形成を誘導することを明らかにした。Regnase-1は自己3′UTRのステムループ(SL)RNA構造に結合して自身の発現を制御していることをマウスモデルで確認した。Regnase-1過剰発現を研究するためのユニークなモデルとなった。CD4陽性T 細胞の活性化に伴って起こるRegnase-1蛋白質切断の機能的役割の解明に向けて、Regnase-1蛋白質切断を阻害する変異マウスを用いて、炎症性疾患における遺伝子変異の効果について引き続き検証している。褐色脂肪組織特異的Regnase-1欠損マウスを作製し、それらの疾患モデルや細胞代謝における影響について解析中である。Regnase-1特異的RNA分解活性阻害剤取得に向けて、適切な点変異体を絞り込み、低分子化合物ライブラリーを用いたRegnase-1蛋白質のRNA分解活性阻害物質のスクリーニングを実施し、いくつかの候補化合物の情報を取得した。細胞レベルでの阻害効果について研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T細胞サブセット特異的Regnase-1欠損マウスを作製し、その機能解析を行い、これまでにマウス由来T細胞に対するシングルセル解析やRNA-seqなどの網羅的解析データと、各サブセット間の遺伝子発現の差異や実際の生体免疫系への影響に関する結果が得られている。これらに知見に基づき、新規関連遺伝子改変マウスの凍結胚・凍結精子を国内外から入手し、生体マウス作製を進行している。NK細胞特異的Regnase-1欠損マウスに関しては、NK細胞におけるレグナーゼ-1を阻害することで、CXCR6陽性NK細胞の抗腫瘍活性と腫瘍への浸潤を増強し、固形腫瘍に対するNK細胞を用いた免疫療法を改善する知見を得た(論文投稿中)。Regnase-1のヌクレアーゼ活性阻害変異D141Nマウスは、セリンスレオニンキナーゼPim2がRegnase-1の標的遺伝子であることを見出し、この経路が活性化されることでCD4+ T細胞を介した肺肉芽腫形成を誘導することを明らかにした(論文投稿中)。この知見は、Regnase-1のT細胞機能制御機構の全容解明に大きく寄与すると考えられる。Regnase-1は、自己3′UTRのSL RNA構造の欠失によって自己mRNAの分解を減少させる。Regnase-1 3′UTR変異マウスを作製し、Regnase-1のmRNAとタンパク質レベルが増加していることを確認した。臓器特異的Reganse-1欠損マウスの解析については、、肝細胞および脂肪細胞のエネルギー代謝経路に着目したRegnase-1の役割について解析を進めている。Regnase-1活性阻害低分子化合物の探索については、化合物ライブラリースクリーニングを実施し、いくつかの候補化合物を選定する段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
T細胞サブセットの活性化やサイトカイン産生の調節過程におけるReganse-1の役割について、新規関連遺伝子改変マウスの表現型を参考に確認を進める。また、NK細胞特異的Reganse-1の役割については、ウイルス感染における効果を評価していく。さらに、Malt-1による切断部位変異R111ARegnase-1変異マウスを用いて、Regnase-1の蛋白質切断機能欠失とT細胞機能との関連を検討する。Regnase-1 3′UTR変異マウスを使用して、さまざまな炎症モデルでの評価を進め、ヌクレアーゼ機能欠損Regnase-1変異マウスでは自己免疫疾患モデルとの関連性を解析する。さらに、褐色脂肪組織特異的Regnase-1欠損マウスを用いて、脂肪組織機能やエネルギー代謝経路に関する役割を調査していく。最後に、Regnase-1活性阻害低分子化合物の探索については、候補化合物の評価を多角的に検討していく。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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