研究課題/領域番号 |
20H05696
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分I
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
淺原 弘嗣 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70294460)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
188,500千円 (直接経費: 145,000千円、間接経費: 43,500千円)
2024年度: 36,660千円 (直接経費: 28,200千円、間接経費: 8,460千円)
2023年度: 37,700千円 (直接経費: 29,000千円、間接経費: 8,700千円)
2022年度: 38,610千円 (直接経費: 29,700千円、間接経費: 8,910千円)
2021年度: 37,310千円 (直接経費: 28,700千円、間接経費: 8,610千円)
2020年度: 38,220千円 (直接経費: 29,400千円、間接経費: 8,820千円)
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キーワード | 腱・靭帯 / Mkx / 運動機能 / 遺伝子発現 / 腱・靱帯 |
研究開始時の研究の概要 |
運動器は、筋と骨・軟骨が腱・靱帯によって正確かつ強靭に結ばれることで機能を発揮し、適切な運動刺激においてその機能が向上する。本研究計画においては、腱・靱帯における遺伝子発現ネットワークが、腱・靱帯および運動機能を向上させる分子メカニズムを、複数の遺伝子改変マウス作成による研究と一細胞レベルの分子生物学的解析を有機的に組み合わせることで解明し、腱・靱帯の恒常性維持機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
運動器は、筋肉と骨・軟骨が腱・靱帯によって結びつけられ、正確かつ強靭な機能を発揮する。しかし、腱・靱帯が運動刺激を感知し、恒常性を維持する分子機構はまだ解明されていない。そこで、我々は腱細胞の動態に注目し、転写因子Mkxが腱のアナボリックなメカノ刺激を感知し恒常性を調節する役割を明らかにした。 また、Mkxの活性化が腱の肥大・強化を引き起こすメカニズムを解析した。Mkx遺伝子を編集したマウスを用いて、腱細胞の遺伝子ネットワークを解析したところ、メカノ刺激依存的に増強するMkxの遺伝子発現によって、下流で直接制御される一連の腱特異的な遺伝子発現制御が観察された。更に、運動刺激が腱細胞に与える影響を個体レベルで検証し、遺伝子プログラムと組織構築・再編成を行う分子メカニズムを解析した。 興味深いことに、メカノ刺激を感知して上昇するMkxは、一連の腱の遺伝子制御を行うことで、結果、個体レベルにおいて、生理学的な運動機能の向上を著しく増強する機能があることが明らかとなった。これらの実験結果を基に、ヒトの腱組織における腱細胞の機能を比較し、Mkxを中心とした腱特異的な遺伝子プログラムが存在し、腱の恒常性維持に関与する可能性が示唆された。 以上の研究により、運動器の要となる腱・靱帯の機能の一端が明らかになり、将来の腱組織の疾患や損傷、加齢に対する医療応用の基盤を提供できると期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メカノセンサーからMkxにいたるカスケードの腱・靱帯への影響 マウストレッドミルモデルを使用して、機械的負荷の前後における、Mkxを含む腱特異的な遺伝子発現と組織学的変化に対するメカノ刺激恒常的活性化の影響を検討した。トレッドミルによるアナボリック効果が確認できているプロトコールにおいて、アキレス腱からRNAを採取し、次世代シークエンサーを用いたRNAseqを行い、Mkxとその下流の遺伝子Tnmd、Col1a1、Col1a2、Fmod、Scxを中心とした腱関連遺伝子発現を含め、メカノ刺激の影響をRNAレベルで網羅的に解析し、アキレス腱および膝関節靱帯の組織学的解析として、腱・靱帯断面のH&E、Masson Trichrome染色とToluidine Blue染色を行った。コラーゲンの配向はピコシリウスレッド染色および偏光顕微鏡で分析し、主にI型コラーゲンに富む赤色に染色された繊維とIII型コラーゲンに富む緑色に染色された細い繊維の相対量を評価した。電子顕微鏡検査によって、合成されたコラーゲン線維を評価し、コラーゲン細線維の直径を解析した。生体力学的試験では、腓腹筋と骨を含む腱を採取し、単軸機械試験装置によって分析、剛性、弾性率、最終的な破損までの負荷を解析した。 また、腱組織におけるMkxの活性化が、筋肉に影響を与えているのかどうかを評価するため、電気刺激装置とアイソレーターを使用して、直接脛骨神経へ50Hzのパルス刺激を行い、腓腹筋の強縮時における筋肉の収縮パターン、最大筋張力の変化を調査した。組織学的評価として、前脛骨筋の免疫染色を行い、TypeⅠ, ⅡA, ⅡXなどの筋繊維タイプの割合の変化を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1) ヒト腱細胞を用いたSingle cell RNA sequence解析 手術サンプルから得られるヒト腱組織を用いて、10x Genomics ChromiumシステムによるSingle cell RNA sequence解析を行い、腱を構成する細胞群の同定と機能解析およびMkx陽性細胞の分画抽出を行う。 2) ヒト腱細胞を用いた化合物およびPiezo1の解析 ヒト腱細胞における、機械刺激によって誘導されるMkxと腱形成遺伝子発現の関与を決定するために、メカノ刺激の影響を解析する。また一連のメカノセンサー分子の過剰発現またはsiRNAによるノックダウンの効果を検討する。機械的刺激は、組織張力システムを使用し、ストレッチ幅(1、2、4、8、および10%)および周波数(0.25、0.5、1、および2 Hz)を調整して評価する。 3) ヒト腱細胞を用いたを用いたMkxの解析 ヒト腱細胞を用いた上記の解析において、Mkxがどこまで関与するか、その遺伝子発現を過剰発現およびノックダウンすることで制御し、アナボリックなメカノ刺激における腱関連遺伝子発現上昇でのMkxを介した制御機構をトランスクリプトームワイドに解析する。また、Mkxの発現上昇がメカニカルストレスによってどのようなカスケードで制御されるかを解明する。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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