研究課題/領域番号 |
20J00120
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
泉 貴人 琉球大学, 海洋自然科学科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | テンプライソギンチャク / 同骨海面 / 共生 / 無性生殖 / 分類 / 未記載種 / 潜水調査 / 水族館 |
研究開始時の研究の概要 |
テンプライソギンチャクTempuractis rinkai Izumi, Ise, and Yanagi, 2018は、ムシモドキギンチャク科の1種であり、ノリカイメンの一種と共生する極めて特殊な生態を持つ。しかし、その共生の成立や共進化に関しては、今まで一切の知見がない。 本研究は、テンプライソギンチャクとノリカイメンの共生に注目し、その発祥を発生学・生態学的に突き止めるとともに、全国からテンプライソギンチャクの仲間を採集し、次世代シーケンサーによるMIG-Seq法を用いて、宿主のカイメンとの共進化を進化学・生物地理学的に論じるものである。
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研究実績の概要 |
本年も可能な限り全国への調査に赴き、沖縄県西表島、高知県大月町・宿毛市、小笠原諸島父島、新潟県佐渡島での採集調査を実施した。このうち、西表島ではテンプライソギンチャク類の共生していない同骨海面類を、佐渡島では従来のノリカイメンの1種と共生するテンプライソギンチャクに加えて、橙色をしたノリカイメン類およびミョウガカイメン科に属する同骨海面類に共生するイソギンチャクを採集した。 また、筑波大学下田臨海実験センター協力の下、佐渡の橙色のノリカイメン類を透過型電子顕微鏡TEMを用いて解析したところ、テンプライソギンチャクの従来の宿主であるノリカイメンの一種Oscarella sp.とは別種である可能性が示唆された。 さらに同研究所において、佐渡および鳥羽産のテンプライソギンチャク類の行動観察を行ったところ、佐渡のテンプライソギンチャクTempuractis rinkaiが無性分裂にて生殖した後、異なる色のノリカイメンに潜り込む様子を観察することができた。 この結果から、「本種が明確に宿主特異性を持ちつつ共進化した」という本研究当初の仮説は否定され、(少なくともテンプライソギンチャクは)ある程度柔軟に複数のノリカイメンを移動している可能性が示唆される結果となった。 また、サンガー法による系統樹構築の結果、テンプライソギンチャク類はすべて単系統でムシモドキギンチャク科の系統樹の基部に位置することが示された。本科の中で例外的に小さく、またカイメンと共生するという特殊な生態を持つことを差し引いても、テンプライソギンチャク類の単純な形態は原始的なものであるということが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は採集調査に割く時間と資金を増やすことになった。昨年度における新型コロナウイルス感染症下で活動制限を取り戻すべく、複数地点で採集を行うこととした。採集した個体数は少ないものの、これは本分野の特徴として仕方ないと考えられる。 また、生態観察では有性生殖の証拠こそ掴めなかったものの、テンプライソギンチャクの無性分裂を介した宿主乗り換えや、蛍光物質を用いた水流循環の解析まで行えたため、共生生態的研究としては予定通りに進行していると考えられる。 遅れている点として、2年目に予定していた次世代シーケンサーを用いた解析に至っていないものの、(上記の観察事例より)テンプライソギンチャク類がそもそも宿主特異性を持たない可能性が高まったため、予定していた本解析がそもそも意味を成さない可能性が出てきてしまったため、次世代シーケンサーを用いた解析を今後行うとしても、それぞれの種の系統樹を構築するにとどまると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(就職に伴う日本学術研究会特別研究員PDの任期終了につき、来年度の特別研究員奨励費の交付なし)
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