研究課題/領域番号 |
20J00160
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
山西 絢介 分子科学研究所, 分子科学研究所 メゾスコピック計測研究センター 繊細計測研究部門, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 円偏光 / 磁気力顕微鏡 / 光誘起力顕微鏡 / 逆ファラデー効果 |
研究開始時の研究の概要 |
光と物質の相互作用をナノメートル(nm)スケールで観測することは、長きにわたって注目されてきた研究対象である。特に、反転対称面を持たない構造を表すキラリティを持つ(キラルな)ナノ構造体は、円偏光に対して異なる磁場を生じさせるといった相互作用を現す。本研究では開発する円偏光磁気力顕微鏡によって円偏光照射で生じる磁場を観測し、ナノ構造体の持つ特徴(キラリティ、サイズ、プラズモン材料、磁性非磁性材料)が誘起される磁場にどのように影響を与えるかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ナノ構造体に円偏光の光を照射することで生じる磁場を磁性探針に働く力として観測することで、光と磁気の関係をナノスケールで明らかにすることである。そのために、様々な光を導入できる原子間力顕微鏡の開発を行った。初めに、探針と試料の熱膨張の問題を解決する測定手法であるヘテロダインFM法を実現する変調系および測定系の開発に成功した。また、特に信号検出系の改良に注力した。具体的に行った信号検出系の改良は、力検出器の変位を測定する光検出器、IV変換器、演算回路などの検出系である。その結果、4MHz程度の広い帯域を持ち、従来の3分の1の測定ノイズである信号検出系を実現した。これによって、より高感度に磁気力を可視化し、探針と試料の熱膨張の問題をより高精度に取り除くことができる。 開発した円偏光磁気力顕微鏡を用いて、金ナノ構造体に円偏光を照射して生じる磁場の観測を試みた。実際に観測されたのは探針-試料間の電気双極子間の相互作用力であり、磁気双極子間の力を観測することはできなかった。また、より強い磁場勾配を生み出す金ナノ微粒子を試料としての測定も試みたが、信号が検出されるほどの強い光強度では、微粒子が発熱によって溶けてしまい、強い磁場勾配を維持することができなかった。今後は、発熱に強く、強い磁場勾配を維持することができるシリカコートされた金ナノ微粒子に対して観測を行う。また、探針も通常の探針より厚く磁気コートされたものを用いることで、磁場観測の検出感度を上げることを試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画において本年度の当初の予定は、円偏光磁気力顕微鏡を開発することである。そのため、実際に磁気力観測を試みることができた現在の進展状況は、予定通り以上に進展しているといえる。一方で、誘起される磁場を十分な信号強度で検出するに至っていない。今後は、いかに測定感度を高めた状態で、誘起磁場を観測できるようにするかに研究の進展状況が変わってくると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、測定した試料に対しては、十分な誘起磁場を観測することができなかった。そのため、まず誘起された磁気力の検出を達成することを第一の目標として、研究を推進させる。今後は発熱に強く、強い磁場勾配を維持することができるシリカコートされた金ナノ微粒子に対して誘起磁場の観測を試みる。また、探針も市販されている通常の磁気コート探針よりも厚く磁気コートされたものを用いることで、磁場観測の測定感度を上げることを試みる。さらに、信号検出系の改良も極小なフォトダイオードを利用するなどして随時行う。
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