研究課題
特別研究員奨励費
本研究は自己意識の障害の行動・脳機能レベルでの機序解明を目指す。申請者はこれまで、脳損傷患者の自己意識の障害に着目して脳機能との対応をみる神経心理学研究をおこなってきた。一方で臨床現場での知見に基づきメカニズムを明らかにする実験心理学研究もおこなってきた。それらの研究を軸に、自己意識の障害の包括的な理解を目指す。そのために自己意識の障害を測定できる課題を開発して脳損傷患者を対象に実施し、障害を行動レベルで明らかにする。その上で、課題成績と関連する脳ネットワークを明らかにし、自己意識の障害を脳機能レベルで明らかにする。
自己意識の神経基盤を解明するという目的のもと継続して研究を行った。これまで明らかにしてきた脳の特定の神経ネットワークが自己意識に寄与するという、脳刺激を用いた行動実験の結果を、統制実験によってさらに確実なものとし(①)、さらに行動実験中に脳刺激を行うことで脳活動がどのように変化するかをfMRIによって検討した(②)。これらの結果から、主体感(自己意識)を得るために特定の神経ネットワークが機能し、行動レベルの変化を引き起こしている可能性が明らかとなった。①自己意識の中でも行為の自己帰属感は主体感と呼ばれる。本研究ではこれまで、非侵襲的脳刺激法を用いて、主体感に寄与する脳領域の検討を行ってきた。他者の動きを混ぜたカーソルを操作してターゲット軌道をトレースする課題において、右下前頭回と右側頭頭頂接合部を180度の位相差で刺激した際(反同期刺激)、運動の予測誤差と主体感との相関が強くなることを示した。これまで脳の2領域に同時介入してきたが、単一領域の機能変化によっても行動変化が説明されうる。そこで単一領域の脳刺激による行動指標への効果を検討したところ、これまでの2領域同時介入で得られていた変化は見られなかった。この結果は主体感が2領域を基礎とする神経ネットワークに依存しているという結果を支持する。②上記の運動課題とfMRIの同時計測実験を行った。まず行動指標の変化として、これまで確認されていた2領域への反同期刺激が予測誤差と主体感の相関を強めるという結果が再現された。さらに脳活動では、課題中に右下前頭回で上昇し、側頭頭頂接合部では低下する傾向を確認した。このような2領域の非対称的な同時的変化が、行動指標の変化に対応していると考えられる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Brain Injury
巻: 36 号: 8 ページ: 1053-1058
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https://sites.google.com/view/kentarohiromitsu