研究課題
特別研究員奨励費
物質の根源たる原理の追求は科学における最大の課題の一つである。物質を構成する原子のコアである原子核は、核子と呼ばれるクォーク3つの組で構成される。本研究では、核子を構成するアップクォーク、ダウンクォークに加え、ストレンジ(s)クォークを含めたバリオンのうち、特に難しいsクォークを2つ含む二重ストレンジネス系の相互作用の解明を目指す。二重ストレンジネス系はエマルション検出器でダブルハイパー核として検出される。ダブルハイパー核検出のために行ったJ-PARC E07実験のエマルションを全面解析することで多数のダブルハイパー核を発見するとともに、高速な解析システムを構築し次期実験の基盤技術を開発する。
従前より進めていたJ-PARC E07実験のハイブリッド法によるダブルハイパー核研究を以下のように進めた。(1)E07実験とE373実験で見つかったグザイハイパー核の4事象の詳細解析を進めた。うち2例はこれまで見つかっていたグザイ粒子と窒素原子のより深い新しい束縛状態を示唆する事象であり、二重ストレンジネス相互作用の新たな知見である。論文はarXiv(2103.08793)で公開し、欧文誌に投稿中である。(2)SPring-8の結像型X線顕微鏡を用いて、非破壊でエマルション中のダブルハイパー核事象を複数の角度から観察する方法を確立した。通常の解析で用いられる光学顕微鏡では分解能の制約から構造が決定できなかったダブルハイパー核事象の構造を決定した。2021年度に論文として発表予定である。(3)グザイ原子からのX線を高いS/Nで解析するための事象解析を行った。信号事象であるグザイ粒子は、上流から入射した飛跡がエマルション中で静止し他のフラグメントを放出するシグマストップと呼ばれる特有の構造を持つため、得られた事象を確認・精査し、信号事象のみで構成されるX線スペクトルを報告した。さらに、ハイブリッド法より10倍のダブルハイパー核の発見が期待される全面探査法の開発も進めた。(4)高湿度環境耐性の高い新型ピエゾ素子を導入し、その駆動試験を行った。新型ステージの振動評価を行い、ピエゾ素子と組み合わせることで毎秒1.8視野でエマルションの読み取りが可能であることを示した。(5)機械学習の一種であるConvolutional Neural Network(CNN)を用いて、ダブルハイパー核に似た分岐点を有するアルファ崩壊連続事象を対象とした自動識別法を開発し、従来方法に比べて6倍以上のS/N比を実現し、論文として報告した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
PHYSICAL REVIEW LETTERS
巻: 126 号: 6 ページ: 1-6
10.1103/physrevlett.126.062501
arXiv
巻: 2103.08793
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A
巻: 989 ページ: 164930-164930
10.1016/j.nima.2020.164930
Bull. Soc. Photogr. Imag. Japan
巻: 30 ページ: 22-25
https://www.gifu-u.ac.jp/news/research/2021/03/entry02-10631.html