研究課題/領域番号 |
20J00817
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山下 大喜 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 特別研究員(SPD)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
|
キーワード | カーボンナノチューブ / フォトニック結晶 / 光物性 / 微小共振器 / ナノ物性制御 / ナノマイクロ物理 / 単一光子源 / シリコンフォトニクス / ナノチューブ・グラフェン / ナノ構造物性 |
研究開始時の研究の概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)とシリコンフォトニクスの融合による小型室温動作単一光子発生デバイスの開発を研究目的とする. 第一段階として,CNTから放出された光をフォトニック結晶(PhC)共振器に結合・増強し,単一光子を効率よく共振器内に取り込む手法を開発する.第二段階として,共振器から導波路への高効率結合するデバイス構造のデザインとその作製を行う.共振器の側に線欠陥導波路を導入することで共振器から光を取り出し,導波路端にて,レンズ構造を持った光ファイバーを用いて単一光子を取り出す.第三段階として,励起光も導波路を用いて共振器と結合させることでCNTを励起する手法の確立に取り組む.
|
研究実績の概要 |
本年度までに,カーボンナノチューブ(CNT)から放出された光を1次元フォトニック結晶(PhC)空気モードナノビーム共振器と結合および増強し,導波路端から出力させることに成功している.また,共振器と結合したCNT発光の単一光子放出を確認している.これらの実証ではCNTの共振器への積載に関して,基板上における化学気相成長と乾燥転写法を用いたターゲット共振器への配置を用いた.前者は大量にCNTを基板上に成長できる一方で,10種類以上の異なる発光波長を持つCNTが触媒からランダムな方向に成長するため,波長と位置の合ったデバイスの歩留まりが0.1%ほどであった.この問題を解決するために用いた転写法では,選択したCNTをサブミクロン精度で所望の共振器上へ転写することが可能になり,実際にCNT/共振器ハイブリッドデバイスの実証をNat. Comm.にて報告した. 作製歩留まりの課題について,デバイス面のアプローチから解決する手法として,フォトニックバンドギャップのバンド端モードの利用にも取り組んだ.これまでにバンド端モードの電磁界分布シミュレーションおよびデバイスの作製を行い,CNT発光とバンド端モードの結合を導波路端から出力させることに成功している. さらに共同研究として行っている局所分子修飾CNTと共振器の結合の研究も進んでいる.予めカイラリティが一つに絞られたCNTに対して局所分子修飾をしているため,上述のような波長選択をする必要がない.また,このようなされた局所分子修飾された点では欠陥準位が形成され,単一光子性発光を示す.このようなCNTをナノビーム共振器上に集積し,光子相関測定を行った結果,非常に高い純度の単一光子発光が得られた.さらに共振器と結合した発光も確認し,パーセル効果による狭線幅発光増強にも成功している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主にフォトニック結晶微小共振器とCNTのハイブリッドデバイスにおける作製歩留まりの向上に取り組んだ.計画当初は基板へCNTを直接成長させる予定であったが,デバイスの作製歩留まりが0.1%程度と低かったため,最近,所属研究室で開発した自在転写技術を用いることで所望のCNTを共振器へ配置することが可能になった.一方でこの方法は作製難易度が高く,大量生産にはあまり向かないため,デバイス方面からのアプローチで歩留まり課題の解決を試みた.これまではCNTの発光を増強するために共振器構造を用いていたが,フォトニック結晶構造におけるバンド端モードでも同様の効果が期待できることを見出した.バンド端モードはPhC構造領域全体で得られるというメリットがあるため,CNTの位置を正確に合わせる必要がなくなり,デバイス作製歩留まりの大幅な向上が期待できる.実際にそのようなデバイスを作製することに成功し,デバイス作製における応用範囲を広げることに成功した. また,局所分子修飾CNTと共振器の結合の研究も共同研究としてスタートし,単一光子性発光やパーセル効果の観測など,申請時にはなかった新たな展開として研究が進んでいる. 以上を踏まえ,おおむね順調に研究が進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までに,デバイス作製歩留まりの向上を目指してフォトニック結晶構造によるバンド端モードの利用を試み,CNT発光とバンド端モードの結合を導波路端から出力させることに成功している.本年度はまず,そのようなデバイスに対して光子相関測定を行い,バンド端モードと導波路に結合した単一光子発光を実証する.解決すべき課題としては,導波路端出射デバイスにおける光子相関測定の自動化,発光取り出しの高効率化がある.効率化については,CNTは基板と接触すると非輻射緩和が大幅に増加するため,基板の上に設置した高台の上にCNTを合成する触媒を配置することで,CNTを基板に触れないように架橋させる.また,導波路とPhCの境界で生じる反射ロスを低減させるために空孔を導波路に向かって小さくしていく構造を導入する. さらに,最終段階として,単一光子の取り出しだけではなく励起光も導波路を用いてバンド端モードと結合させることでCNTを励起する手法にも取り組む.共振器構造と同様に,バンド端モードの高次モードを利用を試みる.
|