研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、金属器時代の南シナ海周辺地域に分布していた甕棺墓という埋葬習俗を研究対象とし、海域ネットワークの形成と展開の背景にあった人々の活動について明らかにすることを目的としている。研究では、南シナ海の両岸にあたるベトナムとフィリピンの金属器時代(500BC-AD500 頃)の甕棺墓地遺跡の調査・分析を実施する。具体的には、各遺物のスタイル・技術・素材の分析に基づく製作体系の復元研究から、これらのモノを製作した人々が移動したのか、あるいは製品が移動したのかに迫る。また、埋葬習俗の比較研究から、遠隔地に同一の埋葬習俗が分布しているか否かを検討し、人々が集団的に移住した可能性を検討する。
本研究は、金属器時代の南シナ海周辺地域に分布していた甕棺墓という埋葬習俗を研究対象とし、海域ネットワークの形成と展開の背景にあった人々の活動について明らかにすることを目的としている。具体的には、環南シナ海地域における人の移動パターンの類型設定と移動・移住の様相を明らかにし海域世界の人の移動に関する新たなモデルを構築する。研究最終年である令和4年度は、新型コロナウイルス感染症による影響の低減により、フィリピン、ネグロス島バレンシアにおける金属器時代遺跡の踏査・試掘を集中的に実施した。本調査はフィリピン国立博物館との共同研究である。発掘調査の結果、発掘地点は現代の諸活動によって撹乱を受けており、良好な層序をともなう結果を得ることはできなかった。しかし、近隣住民への聞き取り調査では、多くの住民が住宅建設や耕作時に土器などの考古遺物を発見しており、近隣では多くの遺跡が分布すると考えられる。本調査によって、バレンシア地域と近郊の街バコンの諸遺跡との物質文化の類似性が確認された。9月以降には台湾・中央研究院歴史語言研究所および地球科学研究所にて土器の胎土分析を実施した。胎土分析ではSEM-EDSとEPMAを用いて土器断面の観察、含有鉱物の化学分析等をおこなった。本研究ではこうした研究の成果をもとに、ベトナムおよびフィリピンにおける埋葬遺跡出土の甕棺や土器の製作体系を分類し、土器そのものが海域ネットワークにのって運ばれたのか、人々の持つ土器製作の知識や技術が移動したのかを検討した。また、各埋葬遺跡の墓構造や副葬品の組合せをあわせて比較し、遠隔地における集団的移住の有無やその度合いについて考察した。現在、研究成果をまとめた報告の準備中である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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港市・交流・陶磁器 -東南アジア考古学研究-
巻: / ページ: 73-84
『日本考古学年報』
巻: 71 ページ: 45-49