研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、JSNS2実験における第四のニュートリノの探索感度を向上するべく、小型検出器を用いてJ-PARC物質生命科学実験施設(MLF)におけるニュートリノフラックスの系統誤差を削減することを目標としている。ニュートリノ検出器は既存ものを改修・改良して運用することで、比較的安価かつ迅速に大きな成果を得られると期待される。2020年内に有感部分である液体シンチレーターの入れ替えなどの改修を完了し、1年程度の測定をもってフラックス系統誤差を50%から20%まで削減することで、JSNS2実験感度を統計量にして8年相当分向上させる。
小型検出器の設置可能場所の選定と背景事象量の実測:検討の結果、水銀標的から10m以内で小型検出器の設置可能な候補地としては、MLF第一実験ホールの前置遮蔽体上が適していることがわかった。一方で、第一実験ホールは危険物一般取扱場所として登録されていないため、当初想定していた液体シンチレーター検出器は設置できず、危険物を使用しないプラスチックシンチレーター検出器を検討する必要あることがわかった。また、背景事象量も未知であるため、実測から実験遂行が可能かどうかを検討する必要がある。そこで、本研究と同様に第一実験ホールでの実験遂行を計画している鉛電子ニュートリノ反応断面積測定実験DaRveXと合同で、検出器設置候補地における背景事象測定を2021年6月から7月にかけて1ヶ月程度おこなった。本測定では、検出器の建設、現場への導入やデータ解析などを主導し、first lookな結果について日本物理学会で報告を行った。現状のデータ解析では、後発信号領域に多くの背景事象が存在しており、遅延同時計測による背景事象の削減が難しいことがわかっている。この背景事象はビーム由来の熱中性子が原子核に捕獲された際に放出されるガンマ線が原因と考えられる。ガンマ線の発生源としては、検出器周辺のコンクリートで中性子捕獲が起こる場合と検出器中のガドリニウムで発生する場合が想定できるが、今回の測定では区別ができないため、原因特定のためには追加の測定が必要であることがわかった。現在、追加測定の準備を進めている。ガンマ線の発生源の特定できれば、適切なシールドによって背景事象を削減できるため、ニュートリノ観測が可能となると考えられる。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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The European Physical Journal C
巻: 82 号: 4
10.1140/epjc/s10052-022-10284-2
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 1014 ページ: 165742-165742
10.1016/j.nima.2021.165742