研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、認知神経科学的手法を用いて楽器訓練が高齢者の認知機能・脳に与える影響について検討することを目的とした。フォーマルな楽器訓練経験がない65-85歳の高齢者70名を対象として、ランダムに楽器介入を行う実験群と介入を行わない統制群に分けて、介入前後に2回認知・運動機能検査およびfMRI検査を行う。介入効果の指標となる群(実験群と統制群)x時期(介入前と後)の交互作用が統計的に有意であるかどうかを調べる。
超高齢社会の日本では、認知症患者の増加に伴い、いかに健康寿命を延ばすかが喫緊の課題となっている。その一つの方法として、認知機能低下予防及び向上を目指したマルチモーダル認知介入の検討が進められている。特に、近年の楽器介入研究では、楽器訓練により高齢者の認知機能を向上できる可能性が示唆されているが、その神経基盤は未だ明らかになっていない。そこで本研究では、楽器訓練が高齢者の認知機能に与える効果およびそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。本研究では、高齢者における鍵盤ハーモニカを用いた楽器訓練プログラムのランダム化比較試験を実施することで、介入前後で変化した認知機能、ワーキングメモリ課題遂行中の脳活動および機能的結合が変化した脳領域を特定した。具体的には、(1)楽器介入によって、統制群と比較して介入群では言語記憶課題成績の改善がみられた。(2)楽器介入による脳機能への効果において、介入群では、ワーキングメモリ課題をしている際の脳活動が介入後に減少するという特徴的な神経基盤の変化を明らかにしている。(3)脳活動の結果と同様に、ワーキングメモリ課題中の機能的結合も介入後に減少し、さらに、その機能的結合の減少が大きいほど、言語記憶の改善が大きいことがわかった。これらのことから、脳活動の減少は神経処理効率化を示すと考えられた。これらの成果は国内外の学会にて発表され、国際学術誌Human Brain Mappingに掲載された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Frontiers in Human Neuroscience
巻: 15 ページ: 784026-784026
10.3389/fnhum.2021.784026
Human Brain Mapping
巻: 42 号: 5 ページ: 1359-1375
10.1002/hbm.25298
120006943320