研究課題
特別研究員奨励費
歯は上皮ー間葉相互作用により形成される器官として知られており、上皮ー間葉相互作用は発生期における形態形成において、毛、唾液腺、肺、腎などの様々な器官に共通の様式として重要な役割を果たしている。しかしながら、上皮ー間葉相互作用の最初期である上皮の間葉への陥入を制御する因子の同定はいまだなされていない。我々はこれまでの研究で、上皮ー間葉相互作用により形成される器官の発生初期サンプルを用いて、網羅的解析を行い、それぞれの器官に共通する遺伝子群の同定に成功した。本研究では、これら遺伝子の機能解析を魚類モデルを用いて解明する。
本年度は主に、昨年度開発した器官培養法を用いたドラッグスクリーニングモデルを用いて、抗がん剤の副作用回避モデルの構築を行い、副作用回避法の検討を行った。マウス胎仔歯胚にCPAを添加し、器官培養法にて培養したところ、形態形成期にあたる胎生14日齢 (E14)およびE16の歯胚において、成長の阻害を認めたが、分化期であるE18では、形成阻害は認められなかった。次に、同モデルを用いて副作用回避法の検索を行った。CPAを添加する最初の3日間のみ25℃の低温刺激下で培養を行った結果、正常な歯胚形成が認められた。そこで、CAGE法を用いて網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、CPA添加時に低温培養を行った歯胚において、G1/S細胞周期チェックポイントに関連する遺伝子の発現低下を確認した。さらに、歯原性上皮細胞株M3H1細胞を用いて、in vitro解析を行ったところ、Rbのリン酸化が低温によって阻害され、G1/S細胞周期チェックポイントであるRポイントを乗り越えられずに、G1期での細胞周期停止が起こることが明らかになった。低温培養による細胞のS期進行阻害とG1期蓄積により、CPAの架橋反応による細胞障害を防ぐことができることを示唆した。これらの結果から、CPAの臓器形成に与える副作用は、低温に維持することで回避できることが明らかになった。本研究は、抗がん剤の副作用を検出および評価する新たなスクリーニングモデルの構築を通して、将来の抗がん剤副作用回避法の開発への応用に寄与すると考えられる。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 5件)
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