研究課題
特別研究員奨励費
近年、一部のnon-coding RNAは、non-codingではなくcodingであり小さなポリペプチドに翻訳され、その機能が生命機能に重要な役割を担っていることが明らかとなった。我々はin silicoでのスクリーニングを行い、新たに精巣特異的に発現するポリペプチドを同定した。このポリペプチドは哺乳動物で保存されており、その欠損マウスを作製したところ、雄性不妊を示した。本研究では、このポリペプチドの機能解析を行うことを目的とする。この研究を通して、不妊メカニズムの一端を解明できることが期待できる。
昨年度までに、精巣特異的に発現するGm9999遺伝子から2種類のアミノ酸配列が完全に異なるポリペプチド (KastorとPolluks)が翻訳され、これらが精子ミトコンドリアの形態制御に必須であることを明らかにした。本年度は、これらポリペプチドが結合するVDAC3KOマウスを作製し、その表現型の解析を行った。さらに、VDAC3 KOマウスとKastor/Polluks double KO (dKO)マウスを用いて、ミトコンドリア形態制御の解明を試みた。作製したVDAC3 KOマウスは、以前報告されているように外見的な異常は見られないものの、WT雌マウスとの交配により、雄性不妊を示した。また、VDAC3 KOマウスの精子は運動性が低下しており、IVFにおいても受精できないことがわかった。さらに電子顕微鏡を用いて精子ミトコンドリアを観察したところ、Kastor/Polluks dKOマウスと非常に類似した形態異常を示し、この異常が雄性不妊の原因の一端であることを明らかにした。これらの結果は、Kastor/PolluksとVDAC3が協調的に働くことがミトコンドリアの形態制御に重要であることを示唆している。次に、VDAC3 KOマウスとKastor/Polluks dKOマウスの精子を用いて、VDAC機能を評価した。解析の結果、膜電位やミトコンドリアカルシウム量、ミトコンドリア膜透過性遷移孔の開口、細胞死などのVDAC機能に異常は見られなかった。これらの結果から、精子ミトコンドリアの形態制御にVDACの活性は必須で無いことが考えられた。本研究内容を取りまとめ、Nature Communinations誌に報告した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Nat. Commun.
巻: 13(1) 号: 1 ページ: 1071-1071
10.1038/s41467-022-28677-y