研究実績の概要 |
本研究ではエンジニアリングプラスチックの原料である2,6-xylenolの人工生合成経路の構築を目指した。2,6-xylenolは酸化酵素XylMABCによってわずかに、転写制御因子XylSが認識する3-メチルサリチル酸に変換されるため、XylSによる検出が可能である。そこで、XylSを利用してXylMABCを改変することで、2,6-xylenolから3-メチルサリチル酸への変換効率を向上させ、より高感度な2,6-xylenol検出系の構築に取り組んだ。まず、XylSの制御下に抗生物質耐性遺伝子や蛍光タンパク質遺伝子を配置した遺伝子モチーフを利用して、3-メチルサリチル酸の生産量から変異型XylMの活性を評価する系を構築した。この評価系を用いて変異型XylM活性を評価し、機械学習と組み合わせることで、XylMの指向性進化を行った。これにより変換効率が野生型の20倍に向上した変異型XylMの取得に成功した。転写制御因子による酵素活性の評価系を、機械学習と組み合わせた酵素改変手法はこれまで確立されていなく、本研究で確立した手法は膜タンパク質などのin vitroでの酵素活性評価が困難なタンパク質のように、機械学習の適用が難しいと考えられてきたタンパク質の改変を可能にする先駆的な手法である。また3,5-ジメチルチロシンから2,6-xylenolへの変換を担う変異型TPLを構築し、2,6-xylenol人工生合成経路の下流経路の反応が進行することを実証した。そこで、変異型TPL、変異型XylM、XylABC、XylSを組み合わせた3,5-ジメチルチロシン生産検出システムを利用し、2,6-xylenol人工生合成経路の上流経路の反応を担うメチル基転移酵素SacFの活性評価システムを構築した。今後この系を用いてSacFの改変が可能になることが期待できる。
|