研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、極限環境に生息するアーキアのゲノムDNA複製過程の詳細な分子機構を解明することである。特に、RNAプライマーの合成からDNA鎖伸長への効率的な移行を可能にする分子機構に注目し、超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisのレプリソームにおいて、複製ポリメラーゼ (PolD) とその補助因子 (PCNA) 及びプライマーゼ (PriS/PriL) の複合体形成の制御機構解明を、立体構造解析とin vitro、in vivoにおける生化学的解析の両面から進める。
アーキアの複製ポリメラーゼであるPolDが、CMGヘリカーゼ (MCM-GINS-GAN複合体) とプライマーゼのブリッジとなることでレプリソームを形成することを昨年度報告した。そこで、CMGヘリカーゼとPolDの複合体形成に関してさらに詳細な解析を行ったところ、GINSが2分子のPolDと強固に結合することが証明された。次にこの相互作用は、PolDのDP1サブユニットのN末端ドメイン(DP1N)とGINSのGins51サブユニットのC末端ドメイン(Gins51C)との結合によることを示し、DP1N-Gins51C-GAN三者複合体の結晶構造解析を行なった。さらに、DP1N-Gins51Cを介した結合が存在する条件でのみ、PolDがCMG様ヘリカーゼの一本鎖DNA依存性のヘリカーゼ活性を促進することを発見した。すなわち、リーディング鎖上を進行するCMGヘリカーゼにPolDが結合することによって、親DNA二本鎖を解く反応が促進されるという、ヘリカーゼ-ポリメラーゼ間の機能的な相互作用を初めて実験的に証明した。これらの結果をまとめて論文発表を行なった。CMGヘリカーゼとPolDの強固な結合とは対照的に、PolDとプライマーゼの複合体形成はPolD-PCNA-DNA複合体の形成とともに解消される。PolDとプライマーゼの相互作用部位についても詳細な構造解析が必要と考えた。PolDのDP2サブユニットのcPIPを模した合成ペプチドを設計し、精製したPriLのN末端ドメイン (PriLN)と混合して結晶構造解析を行なったところ、PriLNに存在する疎水性ポケットに、ヘリックス構造を形成したDP2cPIPが結合することが明らかとなり、部位特異的変異体を用いた生化学的解析によって複合体の形成における重要性が証明された。これらの結果をまとめて学会発表を行なった。論文投稿準備を進めている。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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