研究実績の概要 |
令和3年度、前年度に引き続き、可燃性冷媒の燃焼性解明に向けた研究に取り組んだ。国内外の学会で研究成果を発表、特に可燃性冷媒分子内のフッ素と水素の比が、試料の反応性に及ぼす影響を明らかにし、冷媒の反応性を包括的に評価する指標を示した。複数の冷媒組成の反応性評価からこれまで燃焼性が低いとされてきたフッ素の割合が多い冷媒において、反応性が高くなる傾向を見いだした。この結果は従来の冷媒燃焼性リスク評価の前提を覆すものであった。さらに今年度は、新冷媒として電気自動車への採用が期待されるオレフィン系の冷媒に着目し、研究を行った。反応管実験によって代表的なオレフィン系冷媒である2,3,3,3テトラフルオロプロペンの化学種分布データを取得し、そのデータをもとに新たな燃焼反応モデルを構築した。また、従来のモデルと今回構築したモデルで、2,3,3,3テトラフルオロプロペンの着火遅れ時間に大きな差異があることを発見した。この知見は、2,3,3,3テトラフルオロプロペンが今後、電気自動車等に採用される上で、火災安全の観点から重要な示唆となった。この研究成果は基礎燃焼学分野で最も権威ある国際学術誌Combustion and Flame(IF: 4.570)に投稿準備中である。その他にも令和2年度から、冷媒の燃焼性研究を発展させた、リチウムイオン電池の発火原因解明を図る研究を進めている。特に電解液溶媒の反応性に着目し、溶媒として広く利用されている炭酸エステルの気相反応性を明らかにしつつある。反応管実験で取得した化学種分布データをもとに炭酸エチルメチルの気相反応の燃焼反応モデルを世界に先駆けて構築している。この研究結果については、Combustion and Flameに採択され、筆頭著者として原著論文が公開された。
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