研究実績の概要 |
本研究では,サンクコスト効果と関係している可能性のある行動バイアスについて,理論的および実験的な研究を行った.具体的には不平等回避や罪悪感回避などの社会的選好(Fehr and Schmidt,1999),不確実性回避(Gilboa and Schmeidler,1989),単調性(Anscombe and Aumann,1963)に関する諸アノマリー,期待ベース型の損失回避(Koszegi and Rabin 2006),後悔回避(Zeelenberg,1999),認知的不協和(Suzuki,2019)などの行動バイアスを分析した.結果として,Friedman, Pommerenke, Lukose, Milam and Huberman (2007), Ashraf, Berry and Shapiro (2010), Augenblick (2016)などの先行研究によって報告されているサンクコスト効果のパターンを説明するための行動モデルを特定することができた.このモデルは,本研究とは同時期かつ独立に研究されたEyster, Shengwu, and Ridout (2021)のワーキングペーパーにおいて提唱されたモデルを改善すると同時に,公理論的な基礎を与えていると評価される.本研究のモデルはサンクコスト効果を伴う経済モデルに応用できるとともに,公理化されたモデルはサンクコスト効果を検証する実証・実験研究をデザインする上で有用であると考えられる.
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