研究課題
特別研究員奨励費
本研究では, 非線形項に高階の微分を含む分散型方程式に対する初期値問題の適切性(解の存在, 一意性, 初期値に対する解の連続依存性)を扱う. 高階の非線形偏微分方程式では, 非線形項から生じる強い特異性が原因で解析が困難であった. 本研究の目的は, それらの強い特異性が, 適切性の成立にどのような影響をもたらすかを明らかにすることである. 本研究で扱う偏微分方程式のクラスは, 可積分系として知られるKdV方程式系やシュレディンガー方程式系を含むものである.
発展方程式の初期値問題の適切性(解の存在、一意性、初期値に対する解の連続依存性)は、基本的な問題である。今年度は、一般化ベンジャミン・小野方程式に対する初期値問題の適切性を研究した。先行研究では、短時間フーリエ制限法によって一般化ベンジャミン・小野方程式の初期値問題の適切性が証明されていた。短時間フーリエ制限法は、解空間を巧妙に設定しその上で解を構成するため、無条件一意性を直接得ることは困難である。本研究では、短時間フーリエ制限法とは異なる手法を用いた。今回得られた結果は、先行研究と比べて初期値の正則性の仮定が同じであるが、無条件一意性を証明したことが新しい。また、この結果はより広いクラスの非線形分散型方程式に対しても成立し、線形項のシンボルのオーダーがベンジャミン・小野方程式とKdV方程式の間にある場合や、Intermediate long wave方程式などのそれらが摂動された場合、非線形項が無限大の収束半径を持つ冪級数の場合にも適切性と無条件一意性が得られる。今回用いた手法は、非共鳴な相互作用を処理することに長けている。一方、次数の高い非線形項には、共鳴な相互作用がある。従って、これをいかに処理するかがポイントとなる。本研究では、微分の損失を複数の関数に分散させた後に改良型Strichartz評価を用いることで共鳴な相互作用を処理した。この結果は論文雑誌Journal of Functional Analysisに掲載済みである。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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