研究課題
特別研究員奨励費
歯周病は歯を支持する歯周組織が破壊される炎症性疾患として知られている。歯周病と糖尿病の相互関係は近年明らかになっているが、糖代謝において重要な役割を果たす骨格筋に焦点を当てた研究は未だ存在しない。本研究では動物モデルを用い、歯周病原細菌の感染が筋の脂肪化に影響するか、骨格筋の糖取り込み等の代謝異常に影響するか、また発現遺伝子の変動が起こるかといった検討を行う。さらにヒト臨床データを用い歯周病原細菌の感染と筋脂肪化との関連を調査する。本研究により歯周病の骨格筋への影響が明らかとなれば、歯周病のさらなる危険性を注意喚起することにつながり、健康寿命の延伸へと貢献することができると考えている。
歯周病は多くの全身疾患と密接に関わることが明らかとなってきた。中でも歯周病と糖尿病は密接な関係を持つことが知られている。歯周病は糖尿病の病態を悪化させることが明らかとなっているが、運動や姿勢保持のみならず全身の糖代謝調節においても基幹的役割を担っている骨格筋に着目した研究はこれまで乏しかった。申請者は姿勢の維持や持久力を担う遅筋と、瞬発力を担う速筋に着目して実験を行った。また血中のグルコースは臓器に取り込まれたのちエネルギー源として利用されるが、細胞内へのグルコース取り込み量を測定することにより、細胞そのものの糖取り込み能力や糖消費量に関する情報が得られる。申請者はグルコースと同様に細胞内に取り込まれるが、その後解糖系で代謝されない2-deoxy-d-glucose(2DG)を用いることにより、細胞に取り込まれた糖を定量する系を立ち上げた。歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)の嚥下感染モデルマウスを用いた解析では、代表的な遅筋であるヒラメ筋において組織への2DGの取り込みが有意に阻害されていることが分かった。またマイクロアレイを用いてヒラメ筋における発現変動遺伝子を網羅的に解析したところ、TNFα signaling via NFκBなどの炎症関連遺伝子群が上昇していることが分かった。またマウス筋芽細胞株の培養系においても2DGを用いて細胞内に取り込まれた糖を定量することに成功した(具体的には適したstarvation時間、2DGの濃度等を検討した)。TNFαをマウス筋芽細胞株に添加したところ、細胞内に取り込まれる糖が対照群と比較して有意に低下することが分かった。以上の結果から、歯周病原細菌の感染により骨格筋(特に遅筋)に炎症反応が惹起され、筋組織への糖の取り込みが阻害されることにより骨格筋の代謝異常が惹起されることが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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