研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、体温の超日変動の生理学的な意義を、家畜の生理メカニズム、特にストレス応答および繁殖機能調節に着目して明らかにすることを目的としている。哺乳類の体温は、一日周期の概日リズムによる変動の他に、超日周期(1時間よりも短い周期)により細かな上昇・下降を繰り返しているが、その生理学的意義は明らかとなっていない。この体温の超日変動の頻度、および振幅は生理学的な状態の変化に伴って変化することが知られている。本研究では、ストレス感受性の違いが繁殖能力の差異を生むメカニズムにおいて、体温変動の変化がシグナルとして生理学的状態を伝える可能性を検討する。
本研究では、体温変動の、中型反芻家畜の環境への適応、また繁殖能力の生体指標としての妥当性の検討を目的とした。体温変動の概日リズム、またストレス性体温上昇を、ヒツジ、ヤギといった中型反芻家畜の腹腔内に温度ロガーを留置し計測することにより解析した。本年度は(1)西オーストラリア大学において得られたデータから、ヒツジにおいて気質に関与する一塩基多型(SNP)および行動テストに対するストレス反応がストレス性体温上昇、また体温変動の概日リズムに与える影響を前年度に引き続き調査し、加えて名古屋大学において、(2)エネルギー摂取量、スタンチョンによる行動制限がヤギの体温調節メカニズムに与える影響、(3)体温変動の概日リズムと卵胞発育の促進に不可欠である黄体形成ホルモン(LH)分泌動態との関連を調査した。(1)西オーストラリア大学において得られた体温データの解析を進め、SNPはストレス性体温上昇に影響を与えない一方、行動テストにおけるストレス反応の強い個体においては、ストレス性体温上昇が強く現れることが示唆された。(2)体温は、非行動制限群においてエネルギー摂取量の減少により低下した一方、行動制限群ではエネルギー摂取量による変化はなく、行動制限によるストレスは低エネルギー環境への適応を阻害する可能性が考えられた。(3)体温変動の概日リズムの振幅と平均LH濃度、平均ベースラインLH濃度の間に負の相関が示された。以上より、本研究において、家畜の環境への適応状態や健康状態の生体指標として深部体温の変動を利用するという概念を支持する新たな知見が得られた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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