研究課題
特別研究員奨励費
本邦では不妊症と診断される女性が増加しており、近年では夫婦の6組に1人が不妊治療を受けている。女性における不妊症の原因の1つに子宮の機能不全に起因する子宮性不妊があり、その成因として、人工妊娠中絶や流産に対する子宮内掻爬術、子宮出血に対する救命を目的とした子宮動脈塞栓術の結果、子宮内膜に対する機械的ダメージや血流不全により難治性の子宮内膜菲薄化をきたすことが知られている。子宮性不妊に対する治療戦略として、ホルモン補充等の治療が試みられているが、まだ改善の余地があり、革新的な新規治療法の開発が期待されている。本研究では近年技術進歩が目覚ましい再生医療の技術を用いて、子宮内膜の再生を目指す。
1) 子宮内膜細胞を用いた子宮内膜シートの作成前年度から継続して取り組んでいる子宮内膜上皮細胞と間質細胞を用いた3次元培養について、子宮内膜としての特性を維持した子宮内膜モデル、すなわち子宮内膜シートの作成に今年度も取り組んだ。タンパク発現に加えて、内膜シートを構成する細胞数による表現形の違い、ホルモン応答性の変化等について検討を進めた。良好なviabilityを示す子宮内膜シートの作成条件を同定できたため、今後動物への移植を行い、将来的なヒトへの移植の基盤となる検証を進める予定である。2) 不妊症患者由来月経血細胞の培養倫理審査委員会による審査及びインフォームドコンセントを得た上で、ボランティア及び不妊症患者から月経血サンプルの提供を受け、培養条件の検討を行うとともに、細胞増殖能や遺伝子発現、ホルモン応答性、3次元培養モデルの構築の可能性について検証を行った。また既報より間葉系幹細胞が含まれている可能性が示唆されたため、性質を確認するために分化誘導実験やフローサイトメトリーによる表面マーカーの検索を行い、不妊症患者由来月経血中に間葉系幹細胞が含まれていることを確認した。この月経血由来間葉系幹細胞を用いて、子宮内膜菲薄化という病態に関する治療効果や、三次元培養モデルの構築、子宮内膜組織を構成する細胞への分化誘導実験を実施した。現段階で実験と並行してデータ解析中であり、今後の研究でさらなる解析を進めていく予定である。そして将来的に子宮内膜菲薄化に悩む患者さんに培養細胞の移植という新規治療を提供すべく、基盤となる検証を進める予定である。また、これらの細胞学的研究を将来的に本邦の不妊症患者に応用することを視野に、本邦における不妊症の実態を把握するための研究も実施し、学会発表及び論文発表を行った。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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