研究実績の概要 |
本年度はまず単結晶X線回折によるLi-Ti酸フッ化物Li2Ti(O,F)3の結晶構造精密化を実施した。構造は立方晶系、空間群Fm-3m (no. 225) を仮定し、分析組成を採用することによって信頼度因子R1 = 1.84%, wR2 = 4.92%で最適化された [a = 4.13842(14) Å, V = 70.877(7) Å3, Z = 4, Dcalc = 3.493 g/cm3]。カチオンサイト(Li/Ti/□,□は空孔を示す)は6つのO2-またはF-イオンに配位され正八面体を形成する。精密化されたLi/Ti/□-O/F平均結合長 (2.06921(8) Å) は6配位のLi+とO2-のイオン半径の和 (2.16 Å) よりも短く、イオン半径の小さなF-イオンの部分占有を反映していると考えられる。本研究成果を国際英文誌1報 (Inorg. Chem. 2021, 60, 14613-14621) で発表した。また当該論文は掲載号のカバーアートに選出された。 これに加えて本年度は、Li2Ti(O,F)3に次ぐチタン酸フッ化物の電気化学的結晶育成の二例目として、フッ素ドープCaTiO3結晶の育成を試みた。溶融塩にNa2MoO4-NaF-CaMoO4混合物を用いた結果、Na/Mo/F共ドープCaTiO3結晶(約0.2 mm)が得られた。ドーパント濃度は印加電圧を制御することによりコントロールできた。本研究で得られたNa/Mo/F共ドープCaTiO3結晶は濃い褐色~黒色を呈しており、可視光の照射下で駆動する高活性な光触媒材料の候補となりうる。ペロブスカイト型チタン酸化物への金属共ドープ(La3+/Cr3+やNa+/Mo6+など組み合わせ)やF-ドープは光触媒活性の向上に有益であることが示されている。したがって、将来的な可視光下での光触媒活性評価の実施が期待される。
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