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貝殻上のオアシス:共進化が創出した新たな群集

研究課題

研究課題/領域番号 20J14469
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分補助金
応募区分国内
審査区分 小区分45040:生態学および環境学関連
研究機関東北大学

研究代表者

香川 理  東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2022-03-31
研究課題ステータス 交付 (2021年度)
配分額 *注記
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2021年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2020年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
キーワード共生 / 共進化 / 潮間帯 / 腹足類 / 緑藻類 / 微生物群集
研究開始時の研究の概要

共進化によって生まれた新たな形質は生物間相互作用を変化させ、その結果、群集構造が劇的に変化する可能性が指摘されている。しかしながら、形質の進化がどのように、それを取り巻く生物群集に波及するかという問題はほとんどわかっていない。そこで、本研究では共生による共進化によって生じた形質に着目し、その形質が共生系をとりまく群集構造にさらなる影響を与えているか調査する。具体的には、潮間帯巻貝とその貝殻に付着する藻類の共生系、ならびに貝殻上に生息する微生物群集用いて、野外調査や野外実験、メタバーコーディングによる微生物群集解析を組み合わせることで検証する。

研究実績の概要

潮間帯巻貝スガイとその貝殻にのみ付着する緑藻カイゴロモは密接な共生関係を築いている。そこで本年度はまず、潮間帯巻貝スガイとその貝殻に付着する緑藻カイゴロモの共進化を調べるため、日本全国の潮間帯からスガイとカイゴロモを網羅的にサンプリングし、サンガー法による分子系統を推定した。その結果、ミトコンドリアCO1領域を対象にしたスガイの系統樹は解像度が低く、明確な地理的な分化を明らかにすることは難しかった。一方で、核ITSを対象とした緑藻カイゴロモは地理的に分化していることが明らかになり、その多様化は日本列島の地史と関連していることが明らかになった。また、サンプリングではスガイ以外の巻貝を宿主としているカイゴロモが複数発見された。これらのカイゴロモはスガイに付着するカイゴロモとは遺伝的に分化していたことから、宿主転換による遺伝的分化の可能性もあげられた。今後、より解像度の高いマーカーや次世代シーケンサーによる一塩基多型の解析を行うことで、詳細な共進化動態を明らかにする必要性がある。
また、カイゴロモ上の微生物群集を明らかにするため、顕微鏡による観察と、アンプリコンシーケンスによる網羅的な探索を行なった。これらの結果、想像以上に多種多様な海洋無脊椎動物や細菌類、藻類がスガイ貝殻やカイゴロモ表面を利用していた。今後、貝殻上群集に着目し、これらの群集が規定される要因について調査を進めていく必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

スガイとカイゴロモの網羅的なサンプリングが完了し、検討解析によって共進化を明らかにすることができた。特に野外調査によるサンプリングは対象の種を採集できず、しばしば時間がかかるため、今年度でこれを完了したことは予定以上に順調である。
また貝殻上の微生物群集を調べるためにおこなった顕微鏡観察では予想以上に多様な微生物が確認され、十分な成果を得ることができた。さらに、アンプリコン シーケンスによる網羅的な微生物群集の探索についてはDNAの抽出からシーケンス、そして群集解析までの一連の流れを確立することができ、複数のサンプルを解析することができた。
一方で、コロナウィルスによる緊急事態宣言により、標識採捕獲などの一部の野外調査などは中止された。これらは今後状況をみて行なっていく必要がある。

今後の研究の推進方策

カイゴロモの系統樹から宿主との共進化の可能性が示唆されたため、これらのデータを用いて論文を執筆し、公表する必要がある。スガイに関してはサンガー法によるミトコンドリアCO1を用いた系統樹では解像度が低いため、より高解像度である次世代シーケンサーを用いた解析を行う必要がある。これについてはMIG-seq法を現在予定している。
またアンプリコンシーケンスによって貝殻上の微生物群集の定量化法が確立された。さらに多くのサンプルを解析し、データを加える。また、それらのデータを元に、貝殻上生物群集の多様性や構成がどのような要因で規定されるかを調べる必要がある。そのため、今後、巻貝の生息環境の情報や系統情報、貝殻を利用する共生藻類の系統情報や宿主巻貝との共生度合いといったデータを収集し、それらが貝殻上微生物群集をどのように規定するか取り組む。特にこれについては、階層ベイズモデリングを構築する予定である。

報告書

(1件)
  • 2020 実績報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Citizen science via social media revealed conditions of symbiosis between a marine gastropod and an epibiotic alga2020

    • 著者名/発表者名
      Kagawa Osamu、Uchida Shota、Yamazaki Daishi、Osawa Yumiko、Ito Shun、Chiba Satoshi、The green-costumed snail’s citizen researchers
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 号: 1 ページ: 1-10

    • DOI

      10.1038/s41598-020-74946-5

    • 関連する報告書
      2020 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] New insights from museum specimens: a case of Viviparidae (Caenogastropoda: Mollusca) in Iwakawa’s collection preserved in the National Museum of Nature and Science, Tokyo2020

    • 著者名/発表者名
      Saito Takumi、Kagawa Osamu
    • 雑誌名

      Biodiversity Data Journal

      巻: 8 ページ: 1-31

    • DOI

      10.3897/bdj.8.e52233

    • 関連する報告書
      2020 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 緑藻カイゴロモと宿主スガイにおける共生的相互作用と付着環境の条件2021

    • 著者名/発表者名
      香川理、内田翔太、山崎大志、大澤祐美子、伊藤舜、千葉聡
    • 学会等名
      日本藻類学会
    • 関連する報告書
      2020 実績報告書
  • [学会発表] 潮間帯巻貝スガイと付着緑藻カイゴロモにおける共生相互作用: 冷却効果の利益と付着コストの軽減が共生関係構築の鍵か2020

    • 著者名/発表者名
      香川理、内田翔太、山崎大志、大澤祐美子、伊藤舜、千葉聡
    • 学会等名
      2020年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会
    • 関連する報告書
      2020 実績報告書

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公開日: 2020-07-07   更新日: 2024-03-26  

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