研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞をBBB内皮細胞に分化させたモデル細胞(hiPS-BMECs)において、研究員がこれまで使用してきたモデル化合物YM155の高いA-to-B(血液側→脳側)の輸送活性が見られており、この輸送活性には血液側膜に発現するトランスポーターSLC35F2が大きく寄与していることが見出された。本結果は、今年度国際誌に投稿し受理されている。本化合物は生理的条件下で常に1価のカチオンとなる高水溶性化合物であるため、負電荷をもつ脳毛細血管内皮細胞内から脳実質側への輸送に能動的な薬物トランスポーターが関与していることが考えられた。本トランスポーター同定のため、hiPS-BMECsを用いて阻害剤併用下での輸送試験を行ったところ、multidrug resistance-associated protein (MRP)が候補として同定された。中でもhiPS-BMECsに高発現している分子種について発現細胞を作成し、YM155処理時の細胞毒性およびYM155細胞内取り込み速度を検証したところ、MRP1およびMRP5がYM155の輸送機能を持つことが見出された。特に、MRP5については免疫染色法により、hiPS-BMECsの脳側膜に発現することが明らかとなり、その輸送機能が本細胞におけるYM155のA-to-B輸送に寄与している可能性が示唆された。 また、BBBにおける新規薬物トランスポーター候補として、マウス脳毛細血管内皮細胞に高発現しているSLC19A3に着目し、種々の薬物に対する輸送能を検証したところ、cimetidine, ranitidine, pyrimethamineといった薬物が基質となることを新たに見出した。今後は、SLC19A3機能欠損マウスやhiPS-BMECsを用いることで、BBBにおけるこれら薬物輸送への寄与を明らかにできると考えている。
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