研究実績の概要 |
ABJM理論やその拡張は、その対称性の高さから局所化法により行列模型に帰着する。これらの行列模型において、ゲージ群のランクを粒子数と見なすと、大分配関数をスペクトラル演算子のFredholm行列式で書き下す事ができる。このスペクトラル演算子のもつ対称性(Weyl群)からABJM行列模型やその拡張に関する様々な示唆を得る事ができる。例えば、[Furukawa, Moriyama, Nakanishi, Nucl.Phys.B 969 (2021) 115477]において、スペクトラル演算子のもつWeyl群からHanany-Witten(HW)ブレーン変換とは異なる新たなブレーン変換を提案した。 また IIB弦理論において、ABJM行列模型やその拡張は5ブレーンと(5ブレーンと直交し1次元が円周コンパクト化された)D3ブレーンで特徴付けられ、ゲージ群の異なるランクをもつ模型はHW変換により対応付いている。さらに、このような円周型のブレーン配位に対しては、HW変換でゲージ群のランクを下げる操作(双対性カスケード)を考える事もできる。[Furukawa, Matsumura, Moriyama, Nakanishi, arXiv:2112.13616 [hep-th]]において、スペクトラル演算子のWeyl群に双対性カスケードを組み合わせる事で、ブレーンの配位空間にアフィンWeyl群が現れる事、さらに双対性カスケードの基本領域(カスケードの終着点) がその配位空間を空間充填できる多面体や多胞体になっている事を示した。このとき双対性カスケードは配位空間上の平行移動であり、基本領域の(平行移動による)コピーで空間充填できる事は、双対性カスケードがいつでも唯一の終着点をもつ事を意味している。ここに現れたアフィンWeyl群は、可積分模型と関係の深い構造であり、今後更なる発展が期待できる。
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